研究課題/領域番号 |
21K00143
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
船岡 美穂子 東京藝術大学, 美術学部, 講師 (90597882)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 18世紀 / 風景画 / 愛好家 / フランス / オルレアン / アカデミー / 庭園 / ヴェルネ / ディレッタント / 美術愛好家 |
研究開始時の研究の概要 |
近世以来、フランスはヨーロッパの一大大国となり、優れた美術作品が多数生み出され、受容層も豊かに拡大した。 18世紀の風景画には、新しいテーマや表現が徐々に芽生え、美術愛好家や蒐集家たちから熱心に注文・購入され、物語画を凌ぐほどの人気を誇った。また、当時の美術愛好家たちが、良き趣味の涵養のために風景画制作を好んで実践したことは着目すべきである。 本研究は、従来等閑視されてきた美術愛好家を中心とした素人のたしなみとしての風景画制作活動が、自然に対する新たな感覚や趣味を育み、本職の風景画家たちの作品制作ならびに風景画ジャンルの興隆・発展を促し、影響を与えたことを明らかにしようと試みるものである。
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研究実績の概要 |
近世以来、フランスはヨーロッパの中心たる大国となり、優れた美術作品が多数生み出され、それに伴い先進的な美術愛好家たちが活躍して受容層もいっそう豊かに拡大した。風景画は、とりわけ19世紀以降に発展して近代絵画の一大ジャンルを形成することになるが、18世紀には徐々に新しいテーマや表現が芽生え、やがて美術愛好家たちに熱心に注文・購入されて人気を誇るようになる。本研究は、従来等閑視されてきた美術愛好家を中心とした素人のたしなみとしての風景画制作が、自然に対する新たな感覚や趣味を育み、風景画家たちの作品制作ならびに風景画ジャンルの興隆・発展を促し、影響を与えたことを明らかにしようと試みるものである。 上記の研究目的に沿って予定していたとおり、本年度は、これまでに行ったデータ整理、文献調査を踏まえて、フランスでの現地調査を実施した。美術愛好家が制作した風景画作品を実見調査し、未公刊の一次史料の調査・収集も実現できた。17世紀後半から18世紀にかけてフランスでは、ネーデルラントやイタリアの風景画からの影響も受けながら、特定の場所を描いた地誌的風景画が増加した。その展開と美術愛好家の風景画制作とのつながりを探った。地誌的風景画のタイトルとして多用されるようになる「眺め(vue)」の語義の変遷に着目し、風景画作品の分析を進めた。オルレアン出身の美術愛好家デフリシュの作品をはじめ、彼らの風景画作品には、ヴェルネら職業画家からの影響が見られるとともに、しばしば自国フランスやゆかりのある地域、またみずから所有する庭園への愛着が反映されていたことがわかった。この成果の一部は、学会と研究会での口頭発表、ならびに研究ノートの執筆を通じて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主な計画は、①昨年度までに国内で行ってきた基礎的調査を踏まえて、海外調査を実施し、未公刊の一次史料や美術愛好家の作品の実見調査を行うこと、②地誌的風景画の展開と、非職業画家である美術愛好家の風景画作品制作とのつながりを探ることであった。 ①について言えば、パリを中心として複数の美術愛好家による作品と一次史料を調査できた。加えて、美術愛好家でアマチュアの画家であったエニャン=トマ・デフリシュ(1715-1800)の活動に着目し、その故郷であるオルレアンで、彼の自作の素描、版画、油彩画作品の現地調査を行うことができた。②について言えば、調査を進めてゆく中で、デフリシュが地方に居住しつつもパリの画家や愛好家たちと親交を結び、その影響を受けつつも、郷土愛も重ねながらオルレアンの風景画を多数描いた点に、大きな特徴が認められた。 以上のことから、本年度の計画をほぼ予定どおりに実施できたばかりでなく、研究調査の成果の一部を口頭発表や研究ノートにまとめて報告もできたため、おおむね計画通りに進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に実施した海外調査で収集した作品画像や文献史料の整理とデータ化を継続する。 次に、これまでの成果を踏まえつつ、地誌的風景画作品の制作と作品タイトルにしばしば見られる「眺め(vue)」の語義の変遷について引き続き調査を進め、作品制作と、美術愛好家による理論と実践とのつながりを解明することを目指す。さらに、イギリスの地誌的風景画の表現がフランスに与えた影響にも視野に広げて調査研究を行う。 また、ヴァトレらが執筆した庭園論を読解し、風景画作品の制作と庭園のつながりについても調査・考察を進めたい。あわせて、風景画作品や造園に反映された美術愛好家たちの自然観についても探る。 次年度は最終年度にあたるため、これまでの成果をまとめるべく、できるだけ早い段階で論文執筆に努めたい。
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