研究課題/領域番号 |
21K00147
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
森山 緑 慶應義塾大学, アート・センター(三田), 講師(非常勤) (20779326)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 現代美術 / 剥製 / 毛皮 / 食 / 信仰 / 狩猟 / 神社信仰 / 展覧会 / 鑑賞体験 / 環境問題 |
研究開始時の研究の概要 |
現代美術においては、これまで用いられてこなかった多様な素材で造形された作品が多く見られる。とくに2000年代以降、もともとは標本として製作された「剥製」や「骨」など、動物由来の素材を用いた美術作品が欧米のみならず、日本においても数多く発表されている。 本研究は、それらの美術作品がどのような意図で制作されたのか、また、人々はどのように受け止めるのかを、とくに日本の歴史的、文化史的な文脈から読み解こうとするものである。現代の生活においてわれわれは、時に害獣に苦しめられ、時に気候変動や地球環境問題に立ち向かっている状況である。そのような中、剥製美術作品の意義の解明を通してヒトと動物の関係を再考する。
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研究実績の概要 |
本年度は、1960年代から70年代にかけて、ドイツを中心に活動したダニエル・シュペリ (Daniel Spoerri, 1930- ) が開いたレストランおよび店に併設されたEat Artギャラリーでのイベントに注目し、提供されたメニューや展示物について検討した。Eat Art ギャラリーでの展示では、トーマス・グリュンフェルトによるライオンの剥製や、ウサギの剥製が展示され、それらはレストランで提供されるエキゾティックなメニューと連動し、人々を楽しませるとともに、食と動物の関係性を改めて考えさせるものであった。このテーマは、2019年度のデュッセルドルフのクンスト・パラストでの調査に基づいたもので、同館が所蔵するアーカイヴ資料をもとに、さらに文献調査等を進めて実施した。 ニューヨークでは、2011年にグッゲンハイム美術館で開催された「マウリツィオ・カテラン:すべて」展の調査を行った。出品作品128点中22点の剥製美術作品があり、展示方法も特異な吊り下げ方式であった同展の、展示方法や剥製作品の扱い等について同館学芸員と保存修復家への取材を実施した。 また、国内の事例として、長野県茅野市にある「神長官守矢史料館」の復元展示について調査および考察を行った。1991年に建築家・藤森照信により設計された同館は、中世から神事として行われてきた「御頭祭」の復元展示を行なっている。そこには鹿とイノシシの頭部剥製が壁面に並べられ、白ウサギの剥製が串刺しにされ並べられている。江戸時代の著述家、菅江真澄による絵図をもとに復元された「御頭祭」は、古くから諏訪大社周辺で行われていた肉食と狩猟と深い関わりを持ち、菅江が見聞した頃には75頭の鹿の頭部が奉納されていた。現在でも継承されている神事を実地に見学し、史料館での取材および藤森氏へのインタビューを行い、諏訪地域の特徴的な信仰と食、狩猟の関係を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、国外調査としてニューヨークのグッゲンハイム美術館、自然史博物館、ニューヨーク近代美術館の調査を実施し、ワシントンではスミソニアン博物館のアーカイヴ調査を行った。剥製は元来、自然科学における標本であり、自然史博物館の歴史上重要な役割を果たしてきた。それらを調査できたことは本研究をおおいに補完することになった。 また国内調査として、長野県の諏訪地域に伝承される神事「御頭祭」に関連した調査を行い、食と信仰、狩猟の関係が色濃く現れている諏訪地域の特徴について知見を得ることができた。 こうした調査をもとに、動物観研究(ヒトと動物の関係学会)にて口頭発表を行い、2024年に論文投稿の予定である。また、2011年グッゲンハイム美術館の「マウリツィオ・カテラン:すべて」展で多くの剥製美術作品が展示されたため、同館での取材、調査にもとづいて2024年に論文投稿を予定している。 さらに、剥製美術をテーマとして「ヒトと動物の関係学会・学術大会」でのシンポジウムを企画し、多様な領域の研究者たちと「剥製」について議論を深めることができたことは大きな成果であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度で終了予定であった本研究は、2024年度まで延長が認められたため、2024年度にはこれまでの調査研究をまとめ、学会での発表と論文投稿をする予定である。 また、2023年度にPDFでの報告書をまとめたが、2024年度には簡易的な印刷物を作成する。
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