研究課題/領域番号 |
21K00148
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 清泉女子大学 |
研究代表者 |
佐々木 守俊 清泉女子大学, 文学部, 教授 (00713885)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 仏像 / 奇瑞 / 仏教説話 / 像内納入品 / 仏教版画 / 観音菩薩 / 吉祥天 / 地蔵菩薩 / 印仏 / 志怪 / 寺社縁起 / 日本美術史 / 勧進 |
研究開始時の研究の概要 |
仏像の起こす奇瑞を語る霊験譚や関連作例についての研究は豊富に蓄積されてきたが、奇瑞の発生を前提とし、さらに将来の奇瑞を予期する造像の意義は検証の余地を残す。本研究では仏像や関連する絵画作品の実査とともに、経典・説話・伝記・願文・造像銘記・日記などの史料を分析し、①ほとけの起こす奇瑞がいかに語られ、②それが造像にいかに作用したかを明らかにすることで、仏像生成の場を復元し、奇瑞の表象としての仏像の社会的役割を考察する。
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研究実績の概要 |
前年度に続いて浄瑠璃寺吉祥天立像と宝積寺十一面観音菩薩立像、さらに地蔵菩薩像に関する情報収集とその検証をおこなった。 浄瑠璃寺像については、寺および町田市立国際版画美術館に所蔵される像内納入品の版本吉祥天像全点を調査し、従来は1種類とみられていた印影が実際には4種類であること、4種類の像を縦に並べた細長い版木が使用されていたことをあきらかにした。また、本納入品はこれまで技術的には印捺による「印仏」であるとされてきたが、実際には摺写による「摺仏」とみなしうる可能性を検証した。以上の知見は「浄瑠璃寺吉祥天立像の納入摺仏について」として公表した。像本体についても『讃仏乗抄』所収の表白などの解釈を通じ、動性の表現は『金光明最勝王経』の説く夢中での吉祥天の示現の造形化と理解できること、面貌表現や着衣の表現は「宋風唐美人」を意識した可能性があることを指摘した。以上の知見は2023年度中に公表の予定である。 宝積寺像については寺の所在する京都府山崎の地を実査し、山崎橋・山崎廃寺・山崎津など像の成立と関連する施設跡の位置や現状、隣接する大阪府水無瀬との位置関係を確認したが、像および像内納入品、山崎架橋説話の検証は今後の課題である。関連作例として、岩間寺千手観音菩薩立像の実見、霊験譚発生の場である寺地の景観の調査をおこなった。 地蔵菩薩像については北宋初期の『地蔵菩薩応験記』の検証をおこない、像と奇瑞の関係を語る話型を分類し、他の地蔵霊験譚のタイプ分類への応用を試みた。このほか大量の地蔵の小像を並べたり、大きな像の内部に納入する千体地蔵の情報収集とその検証をおこない、特に寂光院像など小像を像内納入するタイプについては『地蔵菩薩本願経』に説く地蔵の「分身」の結集・一体化とみなされる可能性を指摘した。この知見は「新造された小仏像の像内納入について」の一部として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遠距離の出張が可能となったため、浄瑠璃寺吉祥天立像の像内納入品の調査を実施し、得られた知見から論文2点を執筆することができた。宝積寺十一面観音菩薩立像に関しては立地の調査を実施できたため、像と寺をとりまく景観を考察するうえでの起点となる知見が得られた。また地蔵菩薩像と奇瑞の関係の考察についても千体地蔵についての基本資料の収集および考察がひととおり終了し、今後は千体地蔵以外の作例について霊験譚とのかかわりから検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
浄瑠璃寺吉祥天立像に関する調査研究がひとまず完了したため、最終年度は宝積寺十一面観音菩薩立像を主要考察対象として研究を進める。2022年度に実施した立地の調査結果にもとづく検証を続行するとともに、関連する絵画作例の調査を実施し、鎌倉時代における再興造像、またそのための勧進活動を進めるにあたり架橋説話がどのように機能したかをあきらかにしてゆく。地蔵菩薩像に関してはまだ研究が本格化していないため、作例と史料・説話のピックアップを集中的におこない、実作例の調査を適宜おこなう。以上の研究の成果は論文として公表するとともに、シンポジウムの開催を通じて議論を深化させ、報告書を作成する予定である。
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