研究課題/領域番号 |
21K00162
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 独立行政法人国立美術館京都国立近代美術館 |
研究代表者 |
宮川 智美 独立行政法人国立美術館京都国立近代美術館, 学芸課, 研究員 (10770886)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 近代工芸 / 陶芸 / 走泥社 / ファイバーアート / 近代陶芸 / 現代陶芸 / 河井寬次郎 / 柳宗悦 / 柳原睦夫 / 黒田泰蔵 / 展示 / 工芸 / オーラルヒストリー |
研究開始時の研究の概要 |
日本の現代陶芸は1950年代から、八木一夫などが器のかたちをとらない自由な造形の作品を制作し新たな表現が見られるようになる。彼らに学んだ陶芸家たちは1980年代頃から活躍し、現在も国内外で高い評価を得ている。乾由明は作家と交流しつつ、日本の現代陶芸を伝統工芸・彫刻的な「オブジェ」・実用の器に分け、基礎的な研究の枠組みを提示してきた。しかし彫刻や絵画からの影響のもと展開した海外の陶芸の動向を踏まえ、いま振り返ると、これらの分類では捉えきれていなかった、いわば狭間で活動してきた作家も見出せる。本研究は作家への聞き書きと、作品及び文献資料とによって、20世紀後半の現代陶芸の動向について明らかにする。
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研究実績の概要 |
1)「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」展カタログに収録する資料として、同展出品作家解説(50件)及び関連文献目録(共同編集)を作成した。これまである程度研究の蓄積がある、八木一夫、鈴木治、山田光などの代表的な作家に限らず、今回の展覧会の趣旨に沿って、資料や作品が発見された走泥社展への参加作家たちについて、現時点で確認できる情報をまとめた。限られた紙幅と時間のものではあるが、参照可能な状態に編集し公開することができた。 2)国立アートリサーチセンター(NCAR)によるArt Platform Japan「日本アーティスト事典」に掲載される作家の解説を執筆した。同サイトは、日本の近現代アートに関する情報を国内外に提供することを目的としており、主要な日本人作家のデータベースを作成している。この一環として、河井寬次郎など3件の項目について解説し、日英で公開されている。 3)戦後の陶芸を理解するにあたり、工芸や現代美術という領域の境界が曖昧になっていく状況を踏まえて、異なる素材であっても同時代の動向に視野を広げることは重要である。サブ担当として関わった「小林正和とその時代―ファイバーアート、その向こうへ」展では、60年代以降、染織の領域でも造形表現が多様になっていく動向を取り上げた。そこには陶芸を論じる場合に似た批評の枠組みがあるように思われる。先行研究の枠組みでは狭間におかれ、日本での学術的な位置付けが不十分だった作家の活動について、資料をもとに具体的に辿ることで、彼/彼女たちの活動の特徴を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現代陶芸及び工芸の表現が、1950年代以降多様化してきた歴史を考えるうえで、「走泥社」は重要な位置付けの作家たちであり、関連する文献などを集中して収集し、基礎資料と合わせて、後に参照可能な資料としてまとめることができた。これは、今後の研究に繋がるものと考えている。 また、同時代に活動した作家であっても、陶芸という、素材に限定された領域から、視野を広げるような調査の機会を多く得ることができた。特に染織などの近接する分野においては、工芸史のなかで語られることで、陶芸と似た状況が生まれたと考えられる。インタビューを通して、作家の立場からは素材の別に関わらず、80年代から90年代に形成された分類や批評に関する類似する疑問も聞かれた。これは今後、作家の言葉を資料として読み解くうえで、有意義な観点だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現代陶芸や戦後の工芸を論じる際に、批評とその枠組みがどのように形成されてきたのかを整理する必要があると感じている。同時代の批評とその影響力を客観的に見直しながら、同時に、その言説と作家の立場とは、必ずしも一致していなかったことを念頭におき資料を整理していきたい。特に、コンセプトを自ら語らない作家たちが、工芸の素材を表現媒体にする背景について検討を進めていきたい。
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