研究課題/領域番号 |
21K00171
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
喜多崎 親 成城大学, 文芸学部, 教授 (90204883)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 美術史 / ベルギー / 象徴主義 |
研究開始時の研究の概要 |
19世紀末から20世紀初頭に西欧の美術界を席巻した象徴主義は、1970年代の再評価以降、個別の芸術家に関する研究や各国の状況についての研究が進んだ。だがその結果として、象徴主義とは何かという点に関しては、「再現性よりも人間の内面に目を向ける傾向」といった漠然とした定義に拡大されてしまい、宗教画や歴史画、寓意画といった伝統的ジャンルとの区別が曖昧になってしまった。本研究では、ベルギーの画家フェルナン・クノップフ(1858-1921)の絵画作品を中心に、象徴主義絵画がイメージと意味の伝統的な対応システムをいかに利用・解体し、20世紀の美術の重要な淵源となったかを検証する。
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研究実績の概要 |
2021年度は、コロナのために海外での作品調査が行えず、主として文献調査に限定せざるを得なかった。幸い、フェルナン・クノップフ及び象徴主義絵画に関する主な文献はあらかた収集できた。 2021年度から2022年度の前半はそれらの文献により、クノップフの象徴主義的手法を考える上での、絵画における象徴主義の同時代の考え方、とりわけ、ジャン・モレアスの「象徴主義宣言」(『フィガロ』紙、1886年)、モーリス・ドニの「新伝統主義の定義」(『芸術と批評』誌、1890年)、アルベール・オーリエの「絵画における象徴主義」(『メルキュール・ド・フランス』誌、1891年)などの基本テキストの分析を行い、かつ20世紀における絵画の象徴主義に関する研究史をたどって、象徴主義の定義と手法についてまとめることができた。 これらの作業により、19世紀末当時から象徴主義を巡って対立する関係にあった、クロワゾニスムを中心とする新しい様式としての象徴主義と、新しい図像(個人的寓意)としての象徴主義の関係を整理し、クノップフの位置について再確認すると共に、申請者が重視している画面構造による暗示のレトリックという視点の有効性も確認できた。結果として、これまで申請者が明らかにしてきたポール・ゴーガンやオディロン・ルドン、リュシアン・レヴィ=デュルメールといった象徴主義に分類される画家達の作品におけるレトリックの延長に、クノップフのいくつかの作品が、より明確な方法的意識を持ったものとして位置づけられることが予想され、現在クノップフの具体的な作品の画面構造の分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
象徴主義美術及びクノップフに関する主要な文献の収集と検討が終了し、2022年11月にはコロナのため見送られていた海外における調査も可能となり、ブリュッセルの世紀末美術館、パリのオルセー美術館等での作品調査が実施できたため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、フェルナン・クノップフの油彩画《青い翼》(1895年、ブリュッセル、ジリオン・クロエ・コレクション、ベルギー王立美術館寄託)とそのほぼモノクロームのヴァリアントである素描《白、黒、金》(1901年、ブリュッセル、ベルギー王立美術館)について、画面内の女性像と彫像の関係、描かれた彫像の顔の変更等の理由を、主にクノップフの代表作《私は私自身に扉の鍵をかける》と比較しつつ、象徴主義の手法から分析を試みており、今年度中に論文として発表する予定である。
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