研究課題/領域番号 |
21K00175
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岡添 瑠子 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (50803623)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 現代美術 / 展示空間 / 画廊 / インスタレーション / 展示 / コンセプチュアル・アート / 制度批判の芸術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、これまで美術史で副次的な存在と見なされてきた画廊の美学的・社会的意義を問い直すことを目的とし、とりわけ1980~1990年代初頭に欧米の前衛美術を先駆的に紹介した現代美術画廊「かんらん舎」に焦点を当てる。かんらん舎が主に扱ったコンセプチュアル・アートやインスタレーションは、従来の美術形式や諸制度に疑義を投げかける先鋭的な芸術表現であったが、本研究では、実際に作品を発表するにあたって画廊が果たした役割とはいかなるものであったかを、作家との関係性や<展示>そのものの美学的構造を分析することにより明らかにする。また、戦後日本のみならず国際的な美術動向における同画廊の位置づけを検証する。
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研究実績の概要 |
今年度は主に、かんらん舎の重要な特徴である、インスタレーションやサイトスペシフィック・アートといった、展示空間自体を一つの「機能」と捉える芸術を研究の主軸に据えた。前年度に考察の対象としたブリンキー・パレルモに引き続き、主要作家の一人であるイミ・クネーベル(Imi Knoebel)に焦点を当て、かんらん舎に関する一次資料の分析と作家関連の文献調査を行った。調査によって得た大きな成果の一つは、展覧会の際にクネーベルが提案した展示構成を参照することによって、クネーベル作品における「空間」の重要性がよりはっきりと把握できたことである。これにより、かんらん舎で最初の個展が開催された時期にあたる1980年代前半の作品では、非物質性や目に見えないものといった1960年代のテーマを引き継ぎながら、代表作《19番教室》などのインスタレーションの形式を継続する中で、新たに廃材を用いてイメージを喚起させる試みへと踏み出していたことが確認できた。以上の分析結果を踏まえて、6月には早稲田 表象・メディア論学会にて口頭発表を行い、論文の形でまとめた(『表象・メディア研究』第13号)。このように個々の作家や作品に焦点を当てることにより、かんらん舎の活動が、1960-70年代のインスティテューショナル・クリティック(制度批判)の芸術にも通ずる、展示を通して発信するというコンセプチュアルな性格を持っていたことを具体的に検証することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までの計画では、展示方法という論点を含め複数の作家や展覧会を扱う予定であったが、研究の進展にしたがい、それぞれの作品の詳細を明らかにした上で、かんらん舎での展示が作家の仕事の中でどのような意味を持ったかを考察する必要があると判断した。そのため、今年度はかんらん舎の展示作家の中で特に重要な作家であるクネーベルに的を絞り、作品研究に注力した。結果として、かんらん舎での展示に関する一次資料を参照することによって、クネーベル作品における(展示)空間という論点を深めることができ、またかんらん舎に関しては、単なる作品の展示・販売を超えた画廊の社会的な役割を、具体的な事例に基づいて検証することができたため、非常に有意義なプロセスであった。作家研究には多くの時間を有するが、かんらん舎がどのような作家・作品をいかに紹介したか、それがどのような意味を持つかを明らかにすることは必須であるため、次年度も継続していく。 4月には、日本で初めての個展がかんらん舎で行われたハンネ・ダルボーフェンの展覧会が慶應義塾大学アート・センターで開催され、かんらん舎の画廊主である大谷芳久氏による設営指示の現場に立ち会う機会を得た。壁一面に展示する独特の作品を配置する作業など、実際に展覧会を作り上げる過程を拝見できたことは貴重な経験であった。 また、かんらん舎とも接点を持つドイツの現代美術画廊の名を冠した展覧会「ミニマル/コンセプチュアル:ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術」(川村記念美術館、愛知県美術館、神戸市立美術館)に対し、展覧会評を寄せた(web「ARTiT」)。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度は、引き続きクネーベルの作品と展示空間の関係について資料・文献の調査を進めるとともに、これまでの研究を踏まえて、かんらん舎の国内外における位置付け、特に国内での影響関係について調査を行う。とりわけ美術作家の寺内曜子氏については、国内の現代美術家の中で寺内唯一かんらん舎で個展を行った作家であり、海外の作家とはまた異なる文脈で捉える必要があると考えられる。文献調査に加え、作家や美術関係者に聞き取りを行う予定である。
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