研究課題/領域番号 |
21K00179
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鈴木 桂子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 教授 (10551137)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 美術史 / グローバル・ヒストリー / 服飾史 / 異文化交流 / 経済史 / きもの文化 / 京都 / 繊維産業史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、従来の地域毎、製品の素材や使われた染織技術毎に分断された産業史・「きもの」文化史では見えてこない、グローバルな広がりのある染色の文化を多極的に考察する。具体的に、様々な時空間のレベルに染色の文化を位置づけ、その意味を再検討し、そういった事例を積み重ねることにより、捺染の技術を、西洋から導入された技術と位置づけ、それにより淘汰されていく非西洋という従来のナラチィヴィティを越え、日本から他地域への影響・流通をも加えた、よりバランスのとれたグローバル・ヒストリーのナラチィヴィティの創出をめざす。
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研究実績の概要 |
研究成果の一部は、2022年度は、以下の一連のワークショップで研究成果を発表した。(1)2022年10月29日、法政大学における糸布衣循環史研究会主催のワークショップ「明治初期の繊維産業における革新を考える―島田昌和編著『きものとデザイン:つくり手・売り手の150年』(ミネルヴァ書房 2020年)に焦点をあてて」において、「戦前の機械捺染:導入前夜から黄金期まで」について発表した。(2)2022年11月4日、立命館大学において、国際ワークショップ「幕末から明治期の京都の繊維産業を『J-InnovaTech』の観点から考える」を主催する。同ワークショップでは、「江戸時代以降のコンタクト・ゾーンにおける「きもの」文化」について発表した。(3)2023年2月10日、フランス、パリのフランス国立社会科学高等研究院で開催されたInternational Colloquium Global Japan 50 ansにおいて、“A Global History of Textiles”(招待)について発表した。(4)2023年3月17日、フランス、パリのフランス国立社会科学高等研究院で開催されたワークショップにおいて、“On Japanese Textile Designs in the 19th Century”について発表した。 また、アレワ・テキスタイルズに関する研究に関しては、展覧会「Arewa Textiles of African Printアフリカ× 日本 アレワ紡の時代 ―ナイジェリアと日本の繊維生産 1963-2005」(主催:京都工芸繊維大学美術工芸資料館、開催期間:2023年1月10日-2月17日)に、共催のメンバーとして参加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の進捗にも、新型コロナウィルスの感染状況が強く影響していると言わざるを得ないが、研究は、以下のように進捗した。(1)アロハシャツについては、2022年3月ハワイで聞き取り調査を遂行することができたのに続き、4月には「日本のハワイ」と称される指宿市で現地調査を行うことができた。同市で、4月29日開催の「アロハ宣言セレモニー」やホテル・その他の観光関連施設を参与観察するとともに、アロハシャツ関係業者への聞き取り調査及び市立図書館での史料調査を行った。(2)19世紀前半以降の日本機械捺染史(輸入・輸出を含む)の再検証・補完に関しては、2023年2月から4月にかけ、パリを拠点とし研究滞在することができ、その間、16世紀以降のインド更紗のグローバルな流通による、ヨーロッパ繊維産業への影響、染色デザイン・技術の発展、特に機械捺染についてフランス、英国、オランダで調査することができた。また、アフリカン・プリントについても、オランダでアーカイブ調査を遂行できた。これにより、日本機械捺染史(輸入・輸出を含む)の補完的調査をかなり進めることができた。(3)2021年度に続き、通年で、MCD(民博コスチュームデータベース)プロジェクトに参加し、近代日本身装文化の変容の様子、特に明治以降戦前までの和装と洋装が拮抗していた期間の「きもの文化」を詳細に分析し、洋服と「きもの」の関係と、その様相を検討することができた。(4)共同研究として進めている研究課題「新しい近代京都機械捺染史構築に向けて―近代デザインと産業史をむすぶデジタル・アーカイブを一助として―」において、時代を横断するコンテンツとして近代京都の機械捺染工場の地図データベース作成を進めている。2022年度は、戦前の工場の位置情報をデータ入力し、地図上に落とし込み、分布状況の整理、視覚化を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後の年度ごとの計画を、以下に述べる。 2023年度:文献調査を進めるとともに、北関東を中心に、国内調査の遅れを取り戻していく。アロハシャツに関しては、文献調査・現地調査、またアロハシャツのアジア各地での利用状況の情報収集もかなり進んできた。これをベースとし、論文としてまとめていく。アレワ・テキスタイルズの調査及び「新しい機械捺染史」のデータベース構築を継続する。また、ヨーロッパ研究評議会(ERC)スターティンググラント助成金による「J-InnovaTech ユリイカの向こうへ:日本の第一産業化(1800年-1885年)」(GA n°805098)研究プロジェクト・チーム代表者であるアレクサンドラ・コビルスキ氏(フランス国立社会科学高等研究院 日本研究センターの所長)、法政大学の杉浦未樹教授とともに、19世紀日本の繊維産業のhistoriography(歴史記述)に関する国際共同論文を執筆する。研究成果の一端は、ウィーン大学で開催されるワークショップで発表(招待)、またEuropean Association for Asian Art and Archaeologyで学会発表する。 2024年度:文献調査を進めるとともに、「新しい機械捺染史」のデータベース構築に基づく研究をまとめていく。アロハシャツの補足調査(ハワイ・米国本土の戦争博物館、歴史資料館、中国海南島、シンガポール)を実施する。 2025年度:単著刊行の準備を進める。また国際シンポジウムを企画、開催し、研究関心の研究成果の総括と次なる研究課題・問題点を討議する機会とする。
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