研究開始時の研究の概要 |
これまでイスラーム写本絵画の研究は, 描かれたモチーフの解明や絵画様式の編年を中心とし,絵画史全体の流れを把握することを目的として取り組んできた。そのため,これまでの研究の主流は,様式の特徴に地域性を分析するものや,特定の画家の表現法やパトロンの趣向の解明,単一写本における絵画の特異性や重要性を指摘する研究であり,図像文化を体系的に捉える動きは消極的であった。本研究では, 世俗性の特質を体系的に検証し, 大衆文学のなかで醸成された世俗性の表現が絵画で伝統となって発展する歴史的過程を検証する。また, 聖性の表現との比較分析から, イスラーム美術史のなかでの聖と俗の絵画表現の諸相を明らかにする。
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