研究課題/領域番号 |
21K00218
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
佐藤 英 日本大学, 法学部, 准教授 (10409592)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ナチス / クラシック音楽 / マスメディア / ラジオ / 音楽政策 / プロパガンダ / ドイツ / オーストリア |
研究開始時の研究の概要 |
ナチス・ドイツのラジオ放送において、大部分を占めていたのは音楽番組である。その放送を支えていたのは、急速に進歩していた録音技術だった。本研究は、ナチス・ドイツのクラシック音楽放送において、録音技術がどのような番組制作の可能性を開いていたかについて、ドイツ語圏の新聞等の刊行物、公文書等の未刊行文書、現存する放送録音を駆使しながら、その実態に迫ることを目指すものである。
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研究実績の概要 |
本年度は、ドイツ帝国放送局がラジオで放送したクラシック音楽番組のうち、1944/45年のシーズンにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって制作されたもの、さらに、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の1939年以降の番組についてリサーチを行った。 前者に関しては、1944年10月までのウィーン・フィルの活動について、すでに活字論文を刊行しているため、今年度はその続きを扱った。1945年4月までの演奏と放送の情報を当時の世情に関わるものも含めつつ整理・分析した結果、放送のための仕事とコンサートでの活動との関連性だけにとどまらず、戦争末期の極限状況で演奏家がどのような活動を行っていたか、その実態にも迫ることができた。ただし、この時期のものについては、番組のコンテンツ制作が行われたことは把握できても、放送日を特定できないものが多数あることもわかった。 この調査の過程で、当時、活躍した作曲家とラジオ放送文化に関する資料として、ハンス・プフィッツナーの未刊行の文書にアクセスした。この文書の一部から、番組コンテンツ制作の過程を知ることができた。この文書については、さらなる活用方法もあるように思われるが、そのためには個々のケースについて実際の番組との関連性を調査することが求められる。この可能性を検討することは、今後の課題としたい。 後者に関しては、ラジオ番組の事例の収集、ドイツ連邦公文書館に保存されているベルリン・フィルの放送関係の文書の調査を行った。その結果、これらの資料はナチス・ドイツ時代のラジオの音楽番組でこのオーケストラが果たしていた役割について考察するためのものとなることに加え、番組制作の舞台裏でどのような問題が生じていたかについてアプローチし得るものであることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度もスイスのラジオ雑誌に掲載された番組情報を参照し、ドイツにおいて放送されたクラシック音楽番組に関するデータの収集を行った。これまではドイツの日刊誌をもとに調査をしていたが、日刊紙に掲載されたラジオ番組情報からは1日の全体像を見通すことができないことが多かった。スイスのラジオ雑誌の情報を参照することにより、これまで得られなかったデータを補うことができた。 2024年3月にウィーンにおいて、ナチス・ドイツ時代のクラシック音楽文化とラジオ放送に関するリサーチを行った。オーストリア国立文書館、オーストリア国立図書館、ウィーン楽友協会資料室等を訪問し、当時の資料に直に接することができた。 特にウィーンのクラシック音楽文化と結びついて展開されていたラジオ放送番組制作がいかなるものであったか、さらに当時の番組制作の現場において、技術革新がどのような影響を及ぼしていたかに関して、さらなる考察を展開できる資料が得られたのは大きな収穫であった。 今年度は、第二次世界大戦末期のドイツ語圏におけるラジオ放送とクラシック音楽文化の関連性に関して、1944年11月から1945年4月までのウィーンの事例を文章としてまとめた。これは現在準備中の拙著の一部とする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、海外から取り寄せる資料に基づく日本国内における研究と、海外のアーカイブ等におけるリサーチをバランスよく行い、当該研究課題に取り組む予定であった。このところ直面している問題として、円安による研究資料の購入にかかる費用と現地滞在費が当初の想定以上に大幅に増えてきていることがある(渡航に際しては、航空券の値上げも大きく影響している)。所蔵先においてのみしか閲覧できない資料が多数あるため、現地におけるリサーチは欠くことができないものの、これに費用を多くあててしまうと、今度は資料の調達の際に資金の面で困難が生じてくる。このバランスをとるうちに、時間的なロスが大きくなってきているのである。研究期間はこの先まだ2年あるため、この問題を克服できるようにつとめるが、それが難しい場合にはリサーチの対象を絞り込む必要があるように思われる。今回はオーケストラとオペラの両方を扱う予定だったが、現在の進捗状況を考慮すると、オペラについては研究規模を縮小するのが現実的とも考えられる。この点については、2024年度中に方針を決める予定である。
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