研究課題/領域番号 |
21K00223
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 浜松学院大学短期大学部 |
研究代表者 |
舟橋 三十子 浜松学院大学短期大学部, その他部局等, 客員教授 (00360230)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ソルフェージュ / フォルマシオン・ミュジカル / フォルマシオン・ミュジカルのテクスト / 音楽理論 / 聴音・新曲視唱・新曲視奏 / 音楽基礎教育 / 教材開発 / パリ国立高等音楽院 / フォルマシオン・ミュジカルのテキスト / パリ音楽院(コンセルヴァトワール) / 音楽教育 |
研究開始時の研究の概要 |
ソルフェージュは、音を聴き音符を読み書きする音楽の基礎能力のことである。西洋音楽を学習する上で基盤となる教育であり、専攻実技と平行して学ぶことによって演奏を支え推進していく重要な基礎教育である。 長年日本では、旧来の方法を踏襲する形で実施されてきた。しかし近年、これまでの音楽基礎教育が実技偏重な不均衡さに陥りがちであったことに対する反省から、ソルフェージュの重要性が認識され、フランスで改革事例として生まれたフォルマシオン・ミュジカルに関心が高まっている。 本研究は、音楽の基本とも言えるソルフェージュ教育を、日本の現状に則した音楽基礎教育として再構築するのが目的である。
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研究実績の概要 |
ソルフェージュは、日本に西洋音楽が入ってきてから行われるようになった音楽基礎教育である。現在の日本は、技巧的な面において、世界に冠たる演奏家を輩出している。しかし近年、音楽を専攻する学生の基本的なソルフェージュ能力の低下が、問題になってきている。その原因のひとつとして挙げられるのは、学生の能力に即した適切な教材の不足、教育者の指導力の欠如や教育方法の偏りに問題があるのではないかと考えられる。 そのために、従来の日本のソルフェージュの旧態依然とした音楽教育指導を払拭する必要があった。入門段階として、イラストやクイズ等を利用した親しみ易い方法を用いて、演奏以外で表現できる音楽理論の一端を理解させる必要性を感じた。そこで、日本でよく知られている「ブルクミュラー25の練習曲」を用いたドリルのテクストを、親しみやすく書き著すことに策をこらした。実際にピアノを教えている先生方の経験やアドバイスを生かし、机上の理論にならないよう工夫をしている。 ソルフェージュの本場フランスでは、このような入門者、初心者を対象としたテクストが数多く出版されており、工夫がなされている。フランスでは、従来の「ソルフェージュ」という名称は使われておらず、広い視点から音楽作品を捉えていくという考え方、「フォルマシオン・ミュジカル」が一般的になっている。この教育事例を、フランスで調査する予定を立てていたが、コロナ禍とウクライナ問題という全く予想外の社会情勢の変化で、研究方法を変更せざるを得なかった。 日本では一般的に、ソルフェージュの習得層は中学生以降と考えられているが、その対象を小学生にも広げることにより、今後の研究が実施しやすくなった。と言うのは、音楽専攻の学生は、既に枠にはまった教育を受けており、柔軟性に乏しいからである。今後は、幅広い世代を考慮した音楽基礎訓練を研究対象とし、実績を積んでいく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍のため、日本でも緊急以外の海外渡航は禁止され、2021-2022年度は、不要不急の外出の自粛、日常生活でのマスクの着用が求められた。そのため予定していた他大学の授業見学、音楽関係の教員との面会、図書館の出入り制限等、研究活動が大幅に制約される結果になった。 予定していた海外渡航も規制が多く、現地の状況も日本と同様に制限がかかる状況が続き、学術調査のための楽譜・資料を購入することができなかった。その遅れた状況が、少しずつ改善されてきたとは言え、現在まで続いている。残りの研究期間で、初年度に計画・予定していた研究調査を推し進め、遅れを取り戻したいと考えている。 音楽関係の授業は、オンラインで実施する研究機関も多く、実際の授業進行、レッスンの様子を外部に公開していない場合もあったことは致し方ないと思う。ソルフェージュの授業はその形態上、オンラインでの授業は難しく、また担当教員がオンラインに慣れていないという別の問題も発生し、日本とヨーロッパの場合は時差もあり、解決できなかった。 執筆については、音楽理論についての書籍「和音の正体」(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス刊)を2022年2月末に出版し、この著作について音楽教育指導者向け機関誌に記事を掲載した。また子供を対象とした「ブルクミュラー25の練習曲」(同上)を用いたドリルも出版し、こちらは、楽器店でピアノの先生を対象に講座を行った。 さらに、今までは音楽専門家を対象とした講座を実施してきたが、最近は一般の音楽愛好家対象の講座の要望もあり、数回にわたり早稲田大学での公開講座をオンラインで開講した。今後はこの種の講座実施により、新しいソルフェージュの考え方を、一般愛好家や音楽指導者に普及させて行くという方面からの研究を推し進めたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究上、必要不可欠である海外との交渉は、今までの人脈等を通じて、フランスの情報を常時入手しつつ、研究を進める計画である。2023年11月5日に、日本ソルフェージュ研究協議会において、海外研究協力者であるフランス・パリ国立高等音楽院の渡辺りか子教授と、フランスのフォルマシン・ミュジカルについての研究発表を実施した。この時の情報や、参加者からの意見を参考にして、フランスと日本の現状の相違点を整理し、普及のためのテクストのあり方、教え方を模索していくことを考えている。このフォルマシオン・ミュジカルのコンセプトは、ソルフェージュを担当している音楽家や指導者に、新しいソルフェージュの知識として周知されつつあるので、この路線を踏襲して行く。 さらに、この考え方を引き続き雑誌への寄稿やWEB上での配信など、様々なメディアを活用して発信し続けるつもりである。新しい音楽理論の考え方の必要性は、これらのテキストを使用した講義・講座を普及させ、実際に体験してもらうことで初めて理解できるものである。これからの新しいソルフェージュにフォルマシオン・ミュジカルの考え方を加えた、日本人に合ったテクストの普及を提唱し続けていきたい。 また小学生のような、音楽の入門者、初心者に対しての講座の実施や執筆にも、イラストやクイズ等の考え方を取り入れ、今までとは異なった切り口で行う予定にしている。昨夏に出版した拙著「ブルクミュラー レッスン10分ドリル!」では、今までのソルフェージュの基礎の上に、大作曲家の実作品から音楽を学ぶというフォルマシオン・ミュジカルの姿勢を少しずつ取り入れ、分かり易い指導を組み込むことに成功している。今後は、QRコードを用いて音源を聴けるようにする等のテクノロジーを利用し、引き続き研究を続けていくつもりである。
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