研究課題/領域番号 |
21K00226
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 東京外国語大学 (2023) 東京女子大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
竹田 恵子 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 講師 (30726899)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ジェンダー / 美術 / ポストフェミニズム / 労働 / 教育 / 表象 / 現代美術 / 美術教育 / ハラスメント / ジェンダー・バランス / 少女 / 第三波フェミニズム / 第四波フェミニズム / ジェンダー論争 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は主にメディア研究の領域で行われてきた最新のフェミニズム研究成果を取り入れ、日本現代美術の動向を【(A)教育】【(B)労働】【(C)表象】の各制度を学際的に分析し3者の関係から日本現代美術における「ジェンダー秩序」を明らかにすること目的とする。資料調査、社会調査(質的調査・量的調査)、表象分析といった多数の視点から4年間にわたる調査を実施する。
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研究実績の概要 |
本課題の調査は【教育】、【表象】、【労働】の3つの領域にわかれている。【表象】に関してMultimodal Critical Discourse Analysis(MCDA)の入門書を翻訳し、さらにそれをもとに概説書を共著で執筆している。出版も決定している。これにより、社会記号論を背景とした質的な表象分析の新しい手法を日本に紹介できるともに、表象をさらに精緻に分析することが可能となる。また、【労働】に関してインタビュー調査及び資料調査を行い、アート関係者の労働をめぐる状況について分析を行った。この分析結果として、アートマネージャー、アーティスト等のアート関係者の労働は極めて過酷であることがわかった。そして、「人脈」に頼って仕事を請け負うという慣習とフリーランスであることが多く労働者性が認められにくいことがその要因となっていることが推測できた。しかしながら、ジェンダーによる差別などは当該の調査では見受けられなかった。インタビュー対象者をさらに募り、さらなる調査・分析を行う予定である。 さらにポストフェミニズム理論をめぐる研究会を実施し、豊かな実績をお持ちの研究者と研究交流し知見を深めた。この研究会では【教育】をめぐる内容を扱った、虎岩朋加氏の『教室から編みだすフェミニズム』を取り上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【表象】MCDAは、ビジュアル・イメージの色、文字のフォント、挿入画像といったマルチモーダルな要素を捉え、総合的なイメージからメッセージを読み解き、そのイメージに隠された意図や思想を批判的に分析するものである。報告者は、MCDAの入門書を翻訳し、さらに概説書を執筆する過程において、新たな表象分析の手法を開発し、現代美術の分析に応用する。現在は共著者と入門書の概説書の下書きまで終了させた。今後、これをブラッシュアップし出版予定である。 【労働】日本の労働基準法上の「労働者」とは雇用されている者を指し、社会保障はそれらの者に対して行われる。芸術関係者のほとんどの者はフリーランスで非正規雇用も多いため大変不安定な状況にあるといえるだろう。このような前提のうえで、8名の芸術関係者に半構造化面接法によるインタビュー調査を行った。結果、仕事の状況としては、ほとんどの者がやりたい仕事のために複数の仕事を行っていた。具体的なノウハウを教わる機会がないまま個々人の能力に依存したキャリア構築を行っていたことが特徴的である。また、社会保障の薄さに自覚はあるものの、個々人での対処を行うしかない状況である。さらに、人脈を鍵としたキャリア構築という特徴が明らかとなった。 【教育】虎岩朋加著『教室から編みだすフェミニズム』を検討する研究会において、ポストフェミニズムと教育をめぐる理論的検討を行った。美術領域に限らず、教育において「男子も女子も関係ない」という言説が主流であり、ジェンダー・センシティブな発言をすること自体が封じられるという点、それにも関わらず、性別によって学生の取扱いが異なることが指摘された。また、教員もそれらのジェンダー構造に対して無意識な場合が多い。筆者が提案するのはフェミニスト・ペダゴジーという実践であり、教室のなかでのaffect(情動)を意識することの大切さを示した。
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今後の研究の推進方策 |
【表象】に関しては、MCDAを用いて現代美術の表象分析を行う予定である。【労働】に関しては今年度行った方向性で、インタビュー調査の対象者を増やし、さらなる調査を進める予定である。【教育】では、対象の大学に調査依頼を行い、訪問して調査を行う一方、資料調査、オンラインで収集可能な情報(シラバス検索等)を収集して調査を行う。
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