研究課題/領域番号 |
21K00240
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
羽谷 沙織 立命館大学, 国際教育推進機構, 准教授 (10576151)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | カンボジア / カンボジア古典舞踊ロバム・ボラン / クメール系ディアスポラ / ディアスポラ民間舞踊学校 / 伝統の継承と変容 / 伝統継承 / 複数性 / 古典舞踊ロバム・ボラン / ソピリン・チアム・シャピーロ / プルムソドゥン・アオク / ロバム・ボラン / 継承 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、カンボジア公教育制度の外にありながらディアスポラ民間舞踊学校もロバム・ボランの継承に寄与している点に着目する。彼らの中には、アメリカにおいてロバム・ボランの復興に取り組んだ者がおり、世界的に著名な指導者のソピリン・チアム・シャピーロ(Sophiline Cheam Shapiro)、カンボジア初ゲイ古典舞踊団創設者のプルムソドゥン・アオク(Prumsodun Ok)を挙げることができる。本研究では、アオクのPrumN設立に見るようにクメール系ディアスポラが国家の枠組みと女性継承者制度を超えて「伝統的」とされるロバム・ボランの再定義に挑み、その再創造に貢献している様子を明らかにする。
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研究実績の概要 |
伝統芸能教育を「学校」のなかで実践するという現象を、これまで多くの先行研究は、制度的発展として肯定的に評価してきた(SamCM 1987; Shapiro 1994; Chey 2010)。しかし、こうした研究においては、ロバム・ボランの後援者が、王室からフランス植民地政府、そしてカンボジア国家へあたかも自然発生的に移行したかのように論じられ、そうした制度的発展が、ロバム・ボランの意味を作り変えたり、わざの継承方法に大きな影響を与えたりしたことを取り上げるに至らなかった。さらに、これらの研究では、国民教育制度下の学校における学びのあり方を是としたために、学校において教師から生徒へ引き継がれる知の伝承にこそ意味があるとする価値を生み、学校知に正統性を見出した。こうした流れは、学校以外の空間において継承される踊りを十分に取り上げる土壌を阻み、そうした学びを正統なものと捉えること困難にしてしまった。これは言い換えると、近代学校教育制度を離れてロバム・ボランを継承するということを想像することさえ難しくなるという傾向を生んだと言うことができる。 これに対して、本研究は、国民教育制度下の学校を離れた空間において、ロバム・ボランが引き継がれ再生されている事例を取り上げ、必ずしも国家ではなく、たとえば地域が主体となってロバム・ボランを継承することの可能性、正統性、革新性について論じることである。こうしたねらいは、国民教育制度のなかで継承されるロバム・ボランこそに価値があるという近代以降の創られた、RUFACによるロバム・ボラン継承の正統性を問うことでもある。本研究では、アメリカ・カリフォルニア州ロングビーチ市に目を向け、そこに居住するクメール系ディアスポラが、地域のなかで実践するロバム・ボランの継承について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、本科研を通して取り組んできたカンボジア古典舞踊ロバム・ボランの継承にあたり、おもにアメリカに暮らすクメール系ディアスポラがどのような役割を果たしてきたかについて検討した。その際、新しい比較の軸として、日本に暮らすクメール系ディアスポラも考察対象にくわえ、多角的な視点からロバム・ボラン継承、変容、逸脱について論じた。具体的には、以下にあるように、ワークショップおよび学会発表を実施した、本研究はおおむね順調に進展している。 (ワークショップ) プルムソドゥン・アオク(カンボジア古典舞踊家)・渡海沙藍(NGP法人外国人支援ネットワークすたんどばいみー理事)対談「アメリカ・日本におけるカンボジア古典舞踊ロバム・ボランの継承と課題」(2023年7月、立命館大学)。 (学会発表) 羽谷沙織(2023年、6月)「『学校』以外の空間における舞踊継承の可能性、正統性、革新性―カンボジア古典舞踊ロバム・ボランの担い手としてのディアスポラ民間舞踊団」第59回日本比較教育学会、上智大学。 羽谷沙織(2023年、12月)「ディアスポラが担うカンボジア古典舞踊ロバム・ボランの継承と変容」第105回東南アジア学会(パネル・ディスカッション)「東南アジアの現代アート — パフォーマンスの実践を対象とする予備的考察」研究代表者福岡まどか(大阪大学)、 竹下愛(東京外国語大学)、山本博之(京都大学)。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度の研究方策としては、過年度に収集したデータの蓄積を取りまとめ、書籍化するための段取りを行う。出版社選定、助成金確保などに取り組み、できるだけ早い段階で「カンボジア古典舞踊ロバム・ボランの継承・変容・逸脱のエスノグラフィー」として出版したい。 その文献の趣旨としては、本科研で取り組んできたロバム・ボランの継承におけるクメール系ディアスポラの貢献という一つの側面にとどまらず、19世紀半ばからのフランス植民地期にもたらされた近代学校教育制度に伴って、カンボジア古典舞踊ロバム・ボランの継承がどのように変容してきたのか、そして、そうした変容に、人々はどのように向き合ってきたのかを明らかにすることと広い問題設定とする。書籍では、宮廷期(~19世紀後半)、フランス植民地期(1863年~1953年)、独立期(1953年~1970年)、混乱期(1970年~1993年)、国家再建期(1993年~2023年)というおよそ150年という時間軸を設定し、カンボジアを代表する文化とされるロバム・ボランがどのように継承されてきたのかを、19世紀後半からたどりつつ、現在までに続く開かれた問いとして明らかにしたいと考える。とくに、教育制度史だけでは明らかにされない個々の舞踊家の思想を検討することにより、「時代」や「制度」などのマクロな観点からロバム・ボラン継承の意味や価値を考察することと、「個人」の「認識」といったミクロな視点から検討することの往還を通して、総合的かつ立体的に考察するものとしたい。
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