研究課題/領域番号 |
21K00241
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
鯖江 秀樹 京都精華大学, 芸術学部, 准教授 (30793624)
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研究分担者 |
利根川 由奈 文教大学, 国際学部, 講師 (90896010)
島村 幸忠 京都芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (10911901)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 抽象芸術 / 具体美術運動 / 戦後日本美術 / ベルギー近代美術 / イタリア近代美術 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで近代芸術の国際的な性格はつとに指摘されてきたが、作品という具体物を周縁地にまで物理的に運搬し、作品に込められた理念を波及させる、この「媒介者としての組織」にほとんど光が当てられてこなかった。こうした疑問を立脚点として、本研究は「アート・クラブ」という、国内外で本格的に考究されてこなかった「国際組織」を考察する。通常、20世紀以降の美術史においてこのような芸術家グループは、シュルレアリスムに代表されるように「人物」や「理念」を核とした運動として語られてきたが、本研究では、アート・クラブがいわば「芸術のプラットホーム」を準備したことを複数の観点から明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、戦後美術の国際性を前提として、作品という具体物を周縁地にまで物理的に運搬し、作品に込められた理念を波及させる「媒介者としての組織」の実態を解き明かすことを目的としている。具体的には「アート・クラブ」という、国内外で本格的に考究されてこなかった「国際組織」について文献調査を進め、この美術団体が「芸術のプラットホーム」を準備したことを複数の観点から分析するものである。 2023年度は前年度に引き続き、本研究のメンバーの所属先にてアクセス可能な図書館や文書館で文献調査に専念した。また、鯖江がイタリア・ローマで、クアドリエンナーレ財団および国立近代美術館におけるアーカイブ調査を進めた結果、一次資料のアクセス状況がこれから改善されていくこと、他方でいくつかの重要な資料体が移管途中に散逸した可能性があることを確認した。いずれにせよ、20世紀美術史の再解釈が盛んな今日の傾向において、本研究の意義を再確認するとともに、歴史資料の再発掘を並行して実施する必要がある。 国内では、関連雑誌のバックナンバーを精査し、事実を突き合わせて日本におけるアート・クラブの活動を確認する地道な作業を継続した。昨年度と同じく、二度の打ち合わせを介して、メンバーがそれぞれ自身の専門分野について知見を深め、その成果の公開を積極的に進めることを申し合わせた。 結果的に鯖江は、アート・クラブとも縁深い画家たちへの検証を含む絵画論と、1970年大阪万博に関連する物質文化論を発表した。また島村と利根川はそれぞれ、江戸絵画の美学と日本とベルギーの文化交流に関わる論考を発表した。日本戦後美術史の再検討に資する十分な研究成果を得ることができたという点で、順調に計画は進んだと判断できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前項でも述べたように、研究メンバーが各自着実に成果を発表できていることが、上記進捗にたいする判断の根拠である。今年度は研究の総まとめとして、東京文化財研究所での資料調査をはじめ、国内でのアーカイブ調査を実施しつつ、5編程度の論考を収録した論文集を刊行し、その成果をもって研究書出版の実現につなげていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
代表者の鯖江は各メンバーとの連携を維持しつつ、東京および勤務校にて美術批評誌の精読を継続する。今年度は海外調査の実施予定はないが、クアドリエンナーレ財団から資料提供の許可を得ているので、適宜活用しながら資料面での充実を図る。昨年度はアート・クラブの協会規約を訳出および公開したが、基本的な理解をもたらす資料があれば、今年度も訳出・公開を試みる。 また前項で述べたように、今年度は論文集の刊行を目指す。研究成果の広く公開するべく、完成した論集は紙媒体のみならずリサーチマップの資料公開機能にてPDF版を公開する。鯖江が総論と、イタリアと日本とのアート・クラブの交流史を担当する。島村の論文では、長谷川三郎と抽象表現を検討する。利根川の論文では、ミシェル・スーフォールを中心とするベルギー戦後美術とアート・クラブの関わりが焦点となる。
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