研究課題/領域番号 |
21K00244
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤垣 裕子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (50222261)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
|
キーワード | 科学者の社会的責任 / RRI / ELSI / 科学的助言 / 科学コミュニケーション / オープンサイエンス / 分野比較 |
研究開始時の研究の概要 |
欧州で展開されているRRI(Responsible Research and Innovation)論をレビューすると、日本の科学者の社会的責任論において物理学者の寄与が突出していることが示唆される。一方で現在の日本で必要とされている生命科学や情報科学のELSI(倫理的・法的・社会的含意)と、戦後の物理学者の社会的責任論との間には非連続性がある。本研究では、原爆・原子力発電などの原子物理学関係、広域気候変動や化学物質汚染などの環境問題関係、原発事故などの災害関係、再生医療・生殖医療など生命倫理にかかわる課題、情報技術や人工知能の課題など分野によって異なる責任の質や範囲の特徴を系統的に整理する。
|
研究実績の概要 |
研究計画調書に書いた研究目的の5つの問いの(1)「日本の物理学者の社会的責任論の特徴はどのようなものであったのか。物理学者の社会的責任論が化学者、生命科学者、情報科学といった他の分野に広がっていかなかったのは何故か」についての分析が進んだ。まず、日本の物理学者の社会的責任論は、原子力エネルギーを解放してしまったことへの罪の意識から生じたものである。戦後、核爆弾の製造競争に対し、パグウオッシュ会議などを通じて日本の物理学者は世界にむけて大きな活躍をした。それらの戦後の物理学者の活躍を受けて、1977年からは日本物理学会のなかで「物理学者の社会的責任」シンポジウムが開かれるようになった。このシンポジウムは物理学に限らず、広く科学と社会の課題(核兵器・原子力問題、大学院卒業生の就職問題を含む大学の教育や管理の問題、巨大科学など研究体制や社会のなかの科学研究の問題)を扱っている。それにもかかわらず、この責任論は化学者、生命科学者、情報科学者といった他の分野に広がっていかなかった。その理由として以下の3つが考えられる。第一に、本シンポジウムが他分野にも関心が広がっていたにもかかわらず他の学会にも影響力をもつものではなかったこと、第二に、本シンポジウムが2000年代に入って物理学会とのトラブルを抱えるようになって他の分野への影響どころではなくなったこと、第三にすでに研究成果が原爆等という形になって、それへの対処するために政治運動や市民運動にどう関与すべきかを問う姿勢と、生命科学のように研究成果がいままさに形づくられつつある時点で、それが社会に埋め込まれたときにどうなるかを想像する姿勢とでは、そもそも責任論の構築の仕方が異なることが示唆されるためである。また、昨年度おこなった分野比較研究の続きとして、環境問題の1つであるマイクロプラスティック問題の科学コミュニケーションも扱った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に立てた問いに対する回答は得られつつあるため。
|
今後の研究の推進方策 |
分野ごとの責任論の違いを、より系統的に整理する軸を考察していくことが今後の研究の推進方策となる。
|