研究課題/領域番号 |
21K00246
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01080:科学社会学および科学技術史関連
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研究機関 | 九州工業大学 (2022) 東京工業大学 (2021) |
研究代表者 |
齋藤 宏文 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (30573050)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ルィセンコ主義 / ソ連遺伝学 / 農業科学アカデミー / 農業生物学派 / グルシチェンコ / 自然改造計画 / 全連邦農業科学アカデミー / 農業生物学 / ルィセンコ / ソヴィエト遺伝学 / 生物学史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,全連邦農業科学アカデミー文書記録(1935年~1948年)の調査を通して,旧ソ連の育種学者トロフィム・ルィセンコが率いた農業生物学派の実態を解明する.従来、ルィセンコの安定的な権力基盤とみなされてきた農業生物学派内の構成員による様々な役割分担や、現時点で部分的に明らかになっているルィセンコの農法提案への反発の存在、ルィセンコとの利害関係の様相を上記の文書記録から掘り起こす作業により、ルィセンコの権力状態の実態を露わにし、1948年農業科学アカデミー総会にてソ連遺伝学の弾圧行動へと至るルィセンコの動機形成に関する新たな知見を提出する。
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研究実績の概要 |
2022年2月に始まって以降、長期化するロシアによるウクライナへの軍事侵攻のためにロシアへの渡航が事実上不可能となったことを受けて、2022年度の課題研究の実施可能性は大きく制限されることとなった。モスクワにて農業科学アカデミー関連の文書史料を閲覧できないゆえに、ソ連の農業生物学派内部での人物関係の把握とルィセンコの権力状態の実態解明を軸とした本研究課題は、依然満足に進められていない状況にある。 そうした厳しい制限下でありながらも、日本国内で利用できる資料に基いて、第二次対戦後における農業生物学派の活動の一局面について一定の学術的知見が得られた。とりわけ、ルィセンコがソヴィエト生物・農学界を完全掌握したいわゆる「ルィセンコ事件」(1948年8月)の後に、日本の遺伝学者、農学者や、森林学者、土木学者等が提出した農業生物学派への評価を調べたところ、農業生物学派の活動内容の戦前からの変化と科学政策における影響力の拡大を把握することができた。この研究内容の一部は、1948年10月にその実施が公布された「スターリンの大自然改造計画」の最初のステップとして知られる植林計画へのルィセンコの積極的関与についての知見として日本語の論稿にまとめられている(この論稿は2023年4月に図書の一章分として公刊された)。森林学分野においてこれまで一切実績を有していなかったルィセンコの「果敢な挑戦」(実際は無謀な挑戦に終わった)が、農業生物学派内部でどのように受け取られたのかを分析することは、ルィセンコの権力状態の実態を知る上で有用な証拠事例となるだろうと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記したとおり、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が最大の理由である。これにより農業科学アカデミーに関する文書を所蔵するロシア国立経済文書館(モスクワ)で史料調査を実施することが事実上不可能な状態が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
現状ではロシアとウクライナの戦争状態、および国際関係の推移を見守るより他にない状況といえる。2023年内に問題に対して何らかの解決が図られ、渡航に必要な安全性が保証されたら、課題期間を一年延長することを含め、残された期間内で可能な範囲での文書史料の調査を行う計画である。
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