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戦後日本の「(再)開発文学」研究:ジェンダー・脱人間主義・世界化の視座を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 21K00263
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分02010:日本文学関連
研究機関大阪大学

研究代表者

渡邊 英理  大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (50633567)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワード(再)開発 / 中上健次 / 石牟礼道子 / 脱人間主義 / モダニズム / 世界文学 / メロドラマ / 近現代日本語文学 / 「戦後文学」 / (再)開発文学 / 近現代日本語文学/「戦後文学」 / 干刈あがた / 瀬戸内寂聴 / ジェンダー/セクシュアリティ / 戦後文学 / ジェンダー / 世界化
研究開始時の研究の概要

時代の記憶と思索の言葉として読み解かれる「戦後文学」を「(再)開発」という出来事を視座にして再検討することが、本研究の目的である。ジェンダー(社会的文化的性差)や生の管理をめぐる生権力=生政治の観点から考察を深め、自然を人間の対象や背景としない脱人間主義(「ポストヒューマン/ニズム」)の哲学などの破局を内包した「人新世」時代の思想潮流を参照項とし、「(再)開発文学」が開く思想的な地平を考察する。「戦後日本文学」(史)を「(再)開発文学」研究で再考する本研究は、さらに、それを「世界化」の観点=「冷戦文化」(史)と世界文学(史)との関係性から再文脈化することも目指す。

研究実績の概要

研究3年目の今年度は、大きく三つの方向性で研究を進めた。
第一の方向性は、脱人間主義という視座からの「(再)開発文学」の分析・考察である。中上健次『千年の愉楽』、石牟礼道子の『椿の海の記』、大江健三郎「「罪のゆるし」の青草」『M/Tと森のフシギの物語』を対象に考察を進め、人間による人間の支配と同時に、人間による非人間への支配に抗する批評性を析出した。その成果は、『ユリイカ』『立命館 言語文化研究』等で活字化し発表した。また、その成果を国際シンポジウム「モダニズムの水平線――世界文学シンポジウム」@立命館大学で公表した。また、中上文学の研究成果については、中上を同時代的に知る作家・中沢けい氏に、パゾリーニとの比較をめぐって四方田犬彦氏にそれぞれ公開インタビューをし、石牟礼文学研究の成果については、作家・町田康氏、作家・米本浩二氏との公開鼎談をし、広く社会に還元した。第二の方向性は、地球化と経済化が進む「現代」における「(再)開発文学」の検討である。この観点から、中上の後期小説『軽蔑』、その先駆としての『鳳仙花』を検討し、「メロドラマ的想像力」を抽出し、その射程を分析した。第三の方向性は、「(再)開発文学」の現在形の分析・考察である。戦争と植民地主義という開発主義や、現代日本の排外主義へ批評的に抗する温又柔『魯肉飯のさえずり』(中公文庫)に解説を寄稿した。共同通信・文芸時評「いま、文学の場所へ」、『文學界』新人小説月評などの批評の連載において、芥川賞受賞作、九段理江『東京都同情塔』をはじめとする、現代の「(再)開発文学」について考察し、また、開発下にある土地に着目した文学作品を多数発表している作家・乗代雄介氏への公開インタビューを行うアウトリーチ活動なども行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度計画していた以下の三つの考察を進めることができたため、進捗状況は概ね順調と言える。
1、中上健次、石牟礼道子の文学を対象に脱人間主義という視座からの「(再)開発文学」の分析・考察
2、中上健次の文学を対象に地球化と経済化が進む「現代」における「(再)開発文学」の検討
3、現代文学を対象に「(再)開発文学」の現在形の分析・考察

今後の研究の推進方策

研究4年目の来年度は、石牟礼道子の「(再)開発文学」をジェンダーの観点から考察し、フェミニズム批評としての内実を検討することを軸に研究を行っていく。この考察は、九州筑豊のサークル誌『サークル村』に同時期に参加していた森崎和江・中村きい子らとの比較対照を行いながら進める。そのため、森崎和江や中村きい子の思想文学についての研究も同時並行的に行う予定である。
また、今年度、主に中上健次の文学を対象に行った、地球化と経済化が進む「現代」における「(再)開発文学」の検討も継続する。さらに、同じく今年度行った現代文学を対象とする「(再)開発文学」の現在形の分析と考察も続けていく。なお、中上健次を対象とする研究の成果については、すでに、学術書として単行本にまとめたが、広く社会に還元することも試みる。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (32件)

すべて 2024 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 4件、 招待講演 11件) 図書 (7件)

  • [雑誌論文] 「中上健次と「メロドラマ的想像力」――『鳳仙花』『軽蔑』を中心に」2024

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 雑誌名

      國學院雑誌 第125巻第2号  通巻一四〇二巻

      巻: 1402 ページ: 89-105

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 「小説とポストヒューマニティ 中上健次『千年の愉楽』をめぐって」2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 雑誌名

      『立命館 言語文化研究』 35(1)

      巻: 35(1) ページ: 33-41

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「差別(論)と文学をめぐる覚書」2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 雑誌名

      『社会文学』 (58) 〈特集 差別と文学 水平社100年〉

      巻: (58) ページ: 38-51

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 「大江健三郎と中上健次」2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 雑誌名

      『ユリイカ』2023年7月号 臨時増刊号 総特集=大江健三郎

      巻: 2023年7月号 ページ: 418-431

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 耳の聞こえぬ蛇 : 中上健次「蛇淫」を読む2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 雑誌名

      翻訳の文化/文化の翻訳

      巻: 18 ページ: 35-39

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 希望の現実化のために2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 雑誌名

      文學界

      巻: 77 (2), ページ: 216-221

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 連なり越えゆく世界を感受する2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 雑誌名

      語文

      巻: 118 ページ: 12-27

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 道を「仮設」する : 石牟礼道子『椿の海の記』の世界2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 雑誌名

      日本文学

      巻: 72 (3), ページ: 50-54

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 胡同と路地2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 雑誌名

      文學界

      巻: 76(9) ページ: 152-153

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 批判としての小説――瀬戸内寂聴『夏の終り』2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 雑誌名

      「ユリイカ」 2022年3月号

      巻: 2022年3月号 ページ: 251-261

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] 翻訳と創作の間で:村上春樹と中上健次2024

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      金水敏先生 文化功労者顕彰記念講演会 座談会 「ことばと文学の間で-翻訳と日本語をめぐる対話」
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 連なり越えゆくものを感受する――石牟礼道子の「脱近代」2024

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      シンポジウム「モダニズムの水平線――世界文学シンポジウム」
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 〈現代作家アーカイブ〉中沢けい2024

    • 著者名/発表者名
      中沢けい、渡邊英理
    • 学会等名
      飯田橋文学会〈現代作家アーカイブ〉第28回 中沢けいインタヴュー
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 開発と文学――テキストに開かれる経験の可能性2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      国際開発学会 第24回春季大会 2023年6月10日
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 「南九州」で読む石牟礼道子2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      水俣・福岡展2023協賛企画 in西南学院大学石牟礼道子と水俣――『苦海浄土』の世界を語る
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 「共同体」の危機と文学2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      霧島つきのふね大江健三郎シンポジウム 『燃えあがる緑の木』を読む
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 中上健次とパゾリーニ2023

    • 著者名/発表者名
      四方田犬彦、渡邊英理
    • 学会等名
      熊野大学夏季セミナー 熊野大学×四方田犬彦
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 土地から開く「小説の可能性」2023

    • 著者名/発表者名
      乗代雄介、渡邊英理、田村元彦
    • 学会等名
      読書教養講座・「小説の可能性」
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 中上健次のポストヒューマン思想2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      立命館大学金曜講座・「人間と人間でないものの相互作用」歴史と小説のポストヒューマニティ
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 差別(論)と文学2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      日本社会文学会・シンポジウム差別と文学
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 小説とポストヒューマニティーー中上健次の「思想文学」2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      ワークショップ 小説を読みとく、思想を読みとる 國學院大學共同研究「文学と哲学」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 没後30年 中上健次をとらえなおす2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      トークイベント没後30年 中上健次をとらえなおす
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 対談・路を「仮設」する2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      本のあるところajiro 対談
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 石牟礼道子と中上健次2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      大阪大学国語国文学会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 中上健次と「メロドラマ的想像力」2021

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 学会等名
      日本近代文学会秋季大会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [図書] 『文学を「読む」方法たち : 文学理論の道具箱』韓国語版『クリティカルワード 文学理論』2024

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 総ページ数
      451
    • 出版者
      イームズ
    • ISBN
      9791190944755
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 『『力と交換様式』を読む』2023

    • 著者名/発表者名
      柄谷行人、渡邊英理ほか
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      文藝春秋
    • ISBN
      9784166614103
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 『魯肉飯のさえずり2023

    • 著者名/発表者名
      温又柔、解説・渡邊英理
    • 総ページ数
      296
    • 出版者
      中央公論社
    • ISBN
      9784122074002
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 青山真治ーーアンフィニッシュドワークス2023

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 総ページ数
      240
    • 出版者
      河出書房新社
    • ISBN
      9784309256849
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 中上健次論2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 総ページ数
      520
    • 出版者
      インスクリプト
    • ISBN
      9784900997868
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 日本近代文学大事典(デジタル版) 項目:干刈あがた2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 出版者
      日本近代文学館
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] 『中上健次論』2022

    • 著者名/発表者名
      渡邊英理
    • 総ページ数
      500
    • 出版者
      インスクリプト
    • ISBN
      9784900997868
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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