研究課題/領域番号 |
21K00267
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
藤原 英城 京都府立大学, 文学部, 教授 (20264749)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 西村市郎右衛門 / 浮世草子 / 青木鷺水 / 北条団水 / 西村九左衛門 / 好色つや男 / 上方版好色本 / 未翻刻好色本 / 西村本 / 好色本 / 浮世草子作者 |
研究開始時の研究の概要 |
京都の書肆西村市郎右衛門の初代は、天和期から「西村本」と称される一連の好色本・浮世草子類を刊行する。初代は書肆としてのみならず、それらの作者としても「西村本」の製作に携わったが、従来その活動については西鶴への対抗という視点で語られ、西鶴本以外の好色本・浮世草子またその版元・作者の出版活動との比較・関係性における分析はなされて来なかった。 本研究では上述の研究状況を踏まえ、まず第一に「西村本」の特異性を西鶴本にとらわれることなく同時代の三都の好色本との比較において明らかにし、第二に宝永期における浮世草子作者青木鷺水との関係性において、二代目市郎右衛門の新「西村本」戦略を考察する。
|
研究実績の概要 |
本年度は「西村本」の「浮世草子」について、初代西村市郎右衛門未達を引き継いだ二代目市郎右衛門の誕生とその出版活動を中心に調査・研究を行った。 初代市郎右衛門は元禄九年に没するが、二代目がいつ頃、どのような形で誕生したのかについては、これまで十分には検討されて来なかった。本研究において、そうした不明瞭であった点について以下のことが明らかとなった。 ①元禄八年三月に登場した京の西村九左衛門が一時期江戸の半兵衛の下で修業を積み、同九年二月までに帰京、同月京・手洗水町にて半兵衛の後援を受けつつ『増補枝葉訓解』を出版し、九左衛門としての本格的な独立を果たす。その後、初代没後の元禄九、十年中、遅くとも翌十一年の正月には『延喜太神宮式』を刊行するとともに、二代目市郎右衛門渠営を襲名した。 ②二代目市郎右衛門は宝永期(1704~11)に入って初めて浮世草子の出版に着手するが、それは「其磧・一風競争期」における反八文字屋勢力の動向と連携する活動と位置付けられる。二代目は作品コンセプトとしての「風流」「御前」を前面に打ち出すが、それは西沢一風の作品に追随するものであった。また宝永四年八月刊の『初音物語』を嚆矢として『新玉櫛笥』(宝永六年八月刊)、『吉日鎧曽我』(同七年三月刊)と浮世草子を出版するが、それらの作者はいずれも青木鷺水であり、二代目は鷺水に特化した浮世草子戦略を実行する。鷺水は北条団水と密接な関係が確認できるが、団水は一風と連携した反八文字屋勢力のフィクサー的存在であり、二代目による鷺水の要員化には団水の関与が予想される。 以上の研究成果は、学術論文として令和五年九月に『國語と國文学』(東京大学国語国文学会編)誌上で公刊予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍により、昨年度に引き続き、諸本・書誌調査が十分には実施できなかったが、複写資料等を活用して、研究成果を論文として脱稿し、来年度の9月には公刊されることとなった。研究は、おおむね順調と判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実施計画に基づき、上方版好色本の調査・収集を行うとともに、それらの翻刻・解題などの研究成果を公刊する。また正徳・享保期を中心に、二代目西村市郎右衛門の出版活動を調査する。
|