研究課題/領域番号 |
21K00273
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 武蔵大学 (2022-2023) 立教大学 (2021) |
研究代表者 |
丹羽 みさと (高山 みさと / 丹羽みさと) 武蔵大学, 人文学部, 助教 (90581439)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 江戸川乱歩 / 和本カード / 古典籍 / 男色研究 / 南方熊楠 / 古典籍の収集と利用 / 岩田準一 / 男色文献 / ジェンダー観 / 人的ネットワーク / ジェンダー / 変格探偵小説 |
研究開始時の研究の概要 |
大正から昭和にかけて探偵小説界の第一線で活躍した小説家、江戸川乱歩(1894-1965 本名平井太郎)は、井原西鶴作品をはじめとする近世資料の収集家としても知られている。 これまで乱歩旧蔵の古典籍に関しては、翻刻など単発的な利用が多かったが、本研究では蔵書を中心に総体的に検証していく。 例えば、乱歩の知的関心や人的ネットワークが蔵書形成に及ぼした影響や、蔵書の特色、乱歩にとっての資料的価値の再検討、また乱歩作品における蔵書の反映などについて研究を進め、乱歩文庫を中心とした近代における古典籍収集の意義と効果について明らかにしていく。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、江戸川乱歩が作成した古書の入手記録である「和本カード」の入力調査を手がけ、解題と共に研究誌への掲載が完了した。また旧蔵書を所蔵管理している立教大学図書館と協力し、ホームページ上に索引可能なデータベースとして収録してもらう手筈を整えた。これにより、乱歩自筆の書誌データと書籍現物との照合が可能となり、近代における古典籍の利用や、乱歩作品の典拠分析などの諸研究の基盤を構築することができた。 また、乱歩のジェンダー観や知的関心を明らかにするため、その比較対象として乱歩と同じく男色研究に関心があった南方熊楠の同性愛観について調査を行った。蔵書形成において、江戸川乱歩は男色研究に大きな比重を置いており、乱歩の男色研究に貢献していた人物として、従来から知られていたのは、三重県鳥羽の岩田準一だが、先年、鳥羽調査において岩田が南方熊楠とも頻繁に男色談義を行っていたことがわかった。熊楠は岩田の学識を認めていたが、乱歩についてはやや否定的であった。その根源を探るため、南方の男色研究についての調査を行った。ご進講を行った粘菌学者として注目されがちな熊楠であるが、文学的視点からの研究の進捗や、性に関する意識などが確認できた。 さらに、乱歩がかつて訪れた場所でもあり、乱歩作品にも見られる長崎の各所を調査し、実生活での活動が、作品へどのように応用されていったのかを確認した。それにより、実際の地理的環境と作品の舞台が不一致である場合が見られること、古典や新聞といった文字情報も利用していたことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1,2年目から進めていた「和本カード」を一般公開することができた。印刷物およびデータベースという両軸での閲覧が可能になったことは、国内外の研究者等の調査を容易にし、今後一層、乱歩研究の発展が見込まれる。想定よりも「和本カード」公開作業に時間がかかり、3年目で計画していた捕物小説作家や時代小説に対する乱歩の意識については研究が遅れている。男色文献研究に関しては研究手段に関する知見を得ることが出来たため、次年度の実証的な分析に繋げられる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度完了した「和本カード」のデータや旧蔵書などを用いて、乱歩の男色文献に関するジェンダー観を見て行きたい。特に、「浄愛」や「忠」といった武士の精神に重きを置いていた南方熊楠を比較対象とし、井原西鶴作品等を中心としながら、乱歩にとっての資料的、同性愛研究的な重要度について研究の端緒を開いていく。
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