研究課題/領域番号 |
21K00291
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 二松學舍大學 |
研究代表者 |
長島 弘明 二松學舍大學, 文学部, 教授 (00138182)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 建部綾足 / 俳画 / 画譜 / 画賛 / 和文読本 / 『西山物語』 / 『本朝水滸伝』 / 『歌文要語』 / 俳諧 / 片歌 / 絵画 / 文人 |
研究開始時の研究の概要 |
多芸多能な建部綾足は近世中期の典型的な文人である。綾足の文学史上・学芸史上・絵画史上の価値は、『西山物語』『本朝水滸伝』『折々草』という優れた和文読本・和文随筆を書いた上に、『詞草小苑』という至便な枕詞辞典を編み、加えて、密画から俳画におよぶ幅広い筆致の絵を描いたという、それぞれのジャンルでの活躍を合計した合計点ではかられるわけではない。 綾足の価値は、韻文・散文の文業、国学研究、画業等の全体を貫く、綾足独自の文人精神のあり方にこそあるのである。その文人精神を下支えし、それを一つの思想としてまとめ上げている求心力となっているものを明らかにし、綾足独自の文人精神の全容を把握する。
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研究実績の概要 |
研究の3年目で最終年に当たる本年(2023年度)は、画賛以外の漢画・俳画(草画・略画)・挿絵における画題・画材と、俳諧・片歌・和歌に詠まれている題材、あるいは物語や随筆中で描かれている題材の関係について考察し、次のような成果を得た。 1.動物や鳥類にしろ、花や植物にしろ、綾足が漢画・俳画・挿絵に好んで描く題材は、句歌、特に俳諧の発句にほとんど取り上げられている。ただし、綾足が絵画で偏愛した独特な題材の海錯(魚類)は、季題になりにくいこともあって、これらは句歌、物語等にはほとんど出て来ない。 2.格式張った漢画は、山水にせよ動植物・人物にせよ、伝統的な画題や画法に制約されることが多いため、俳画(略画)の方が、句歌と共通する題材が多く、かつ句歌が描きとっている情緒とも重なることが多い。 3.俳画は、画単独で描かれたものはかなり少なく、賛を付された画賛の形を取る物が多い。因みに、賛は和歌よりも、発句(または片歌)が圧倒的に多い。 4.版行された綾足の画譜の中には、通常の漢画の画譜には入っていないような滑稽味を備えた画がある。例えば『孟喬和漢雑画』巻五の「猫児咬鳥」は、猫が小鳥に飛びかかり、前足で小鳥を押さえながら咬み伏せる一瞬を描き取っているが、猫の爛々と耀く目からは、明らかに滑稽味・俳諧味をうかがうことができる。多分この画には、俳諧からの影響があるのであろう。もう少し説明を加えれば、短いことばで劇的な一瞬を切り取る発句の方法を、描画の方法へと援用したもので、恐らくは綾足の頭の中では、この場面を発句で詠むことが無意識的に試みられ、それが絵画という、別の表現方法に移されたところにこの画が成立していると思われる。蕪村なども若干似たところがないではないが、画家であるとともに俳人でもある綾足に顕著な画の発想ということができる。
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