研究課題/領域番号 |
21K00306
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 法政大学 (2022) 鳴門教育大学 (2021) |
研究代表者 |
黒田 俊太郎 法政大学, 経済学部, 教授 (10646946)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 中河與一 / ゴルフ / 校異 / 校合 / モダニズム / 形式主義 / 浪漫主義 / 全体主義 / 科学知 / 排日運動 / 移民 / 科学 / 日系アメリカ人 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「天の夕顔」に代表される恋愛小説という方法によって、戦時下の人々の心に全体主義思想を注入しようとした中河與一(1897-1994)が、全体主義を奉じるに至った経路を、中河主催の同人誌3誌や中河の小説テクストを分析することで、解明しようとするものである。1920年代にモダニズム作家として出発した中河は、1930年代に自身の芸術理論を日本回帰的な全体主義=浪漫主義へと転換させていった。転換の要因には、科学知との遭遇ということや、1924年移民法の制定ということなどが挙げられると考えている。
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研究実績の概要 |
令和4年度は、1930年代に中河與一が主催した同人誌『翰林』(1933-36)を精査するとともに、1930年代に刊行された中河の小説テクスト(異本を含む)を収集・分析した。 令和3年度には、科学知と遭遇した中河が、「唯物論的な文学論(注、形式主義論)の完成」を目指して創刊した同人誌『新科学的』を調査・分析し、1931年から翌年にかけての中河が、〈科学とロマン〉が交差する地点を模索していたことを指摘した。中河は、ひたすら形式の重要性を主張するところから、「古典・悲劇、そして美の回復という三位一体の理念」に基づき、「「美しさ」という価値=内容」を小説に求めるようなものへとシフトしていったと考えられる。 本年度は、そうした模索期に執筆された小説「ゴルフ―一名鏡に這入る女―」の初出(『文藝春秋』1931)と初刊本『ゴルフ』(昭和書房、1934)、これら両者の本文について校異を実施し、その異同の意味について考察した。これにより、〈科学とロマン〉が交差する地点の模索という中河の思考の動きを、小説「ゴルフ」の改稿という事態の中にも見出すことができるとの分析結果を得ることが出来た。 その結果の一部を、論文「中河與一「ゴルフ」考―初出誌・初刊本の異同について―」(『経済志林』90(3・4)、法政大学経済学部学会、2023・3)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1930年代に刊行された中河與一の小説テクスト(異本を含む)、同人誌『翰林』『文芸世紀』等の一次資料、科学・浪漫主義・全体主義等に関連する同時代の文献、北米日系移民関連資料等を収集することが出来た。また、中河の小説テクスト「ゴルフ」の改稿について分析することで、中河の芸術理論が実践に応用されていることも確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、中河の芸術理論に関する発言を収集・分析し、その質的変容について精査する。また中河の小説テクストの分析も行い、実作への応用過程についても跡づけていく。それにより、中河の芸術理論が全体主義へと向かう地点を特定していきたい。
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