研究課題/領域番号 |
21K00332
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02020:中国文学関連
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
佐竹 保子 大東文化大学, 外国語学部, 特任教授 (20170714)
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研究分担者 |
齋藤 智寛 東北大学, 文学研究科, 教授 (10400201)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 中国文学 / 中国思想 / 仏教哲学 / 文学観 / 詩の注釈 / 六朝時代 / 中国 / 5世紀 / 仏教思想 |
研究開始時の研究の概要 |
中国5世紀の詩文における山水詠の出現は、これを紀元前以来の文学観の文脈におけば、詩歌は「情」「志」を母胎としてそれを詠じるものという観念から、「情」の滅却や浄化への契機としての詩歌という発想への転換ととらえ得る。後者の発想を仏教思想によって導き入れたのは謝霊運(385~433)であり、それを継承しつつ展開させたのが謝霊運の同族で後輩の謝チョウ[月+兆](464~499)であると考えられる。この転換は、文化人類学のいわゆる人中心主義から命中心主義への変化としても解釈でき、以後の中国文学や日本文学(万葉和歌、近世俳句、近代短歌等)に影響を与えており、それらの影響を視野に入れつつ考究していく。
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研究実績の概要 |
研究代表者の佐竹保子は、2本の雑誌論文(紹介と訳注稿)、1冊の訳書を刊行し、さらに2件の学会発表、1件の研究会発表を行った。研究分担者の齋藤智寛は、2本の雑誌論文(紹介)、2件の学会発表を行った。 佐竹「翻訳書紹介 袁行霈著『陶淵明影像』」は、自らの訳書『陶淵明影像――文学史と絵画史の交叉研究』を紹介し、翻訳のいきさつや、訳書の内容とその注目すべき点、原著との相違点、他書との関連、原著者の人となり、著作の意図などを記述している。佐竹他「『宋書』楽志二訳注稿(四)」は、林香奈・狩野雄・佐藤大志・釜谷武志・柳川順子との共著で、『宋書』楽志所収の楽府詩の訳注を作成し、全103頁のうちの15頁分を担当している。佐竹他『血と涙の大地の記憶』は、王友琴の10篇の論文と裴毅然の1篇の論文を、土屋紀義・小林一美・多田狷介と、注釈付きで訳した書で、全575頁のうちの217頁を担当している。 齋藤「北宋仏教の気風」は、筆記小説に見える僧侶の形象や僧侶による詩文の修辞を資料として、北宋仏教の気風が貴族的・宗教的な高踏を脱した生真面目なもので、僧侶は外典の修辞を借用した表現を多用したこと等を明らかにし、5世紀の仏教との相違点と共通点を示している。齋藤他「東北大学文学部百周年記念事業・デジタルミュージアム“歴史を映す名品”」は、柳原敏明・高橋章則・大木一夫・仁平政人・堀裕・鹿又喜隆・藤澤敦・西村直子・矢田尚子・長岡龍作・杉本欣久・阿部恒之との共著であり、齋藤は担当部分で、仏教学者・常盤大定が収集した仏教関係資料や、写真のガラス乾板・自筆原稿・書簡等を紹介している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者の佐竹保子と研究分担者の齋藤智寛は、それぞれ本研究に関わる雑誌論文や訳書を発刊し、学会発表や講演も複数件行っている。 佐竹の学会発表「玄言詩と山水詩における「哲理」と「情」」は、第66回国際東方学者会議シンポジウムⅠ「哲理と自然――六朝山水詩の成立」におけるもので、中国5世紀における文学観の変化と仏教思想の関係に論及している。また佐竹「中国の女性と文学――紀元前から12世紀まで――」は、中京大学文学会におけるもので、招待講演でもある。また佐竹「名取本「玄奘伝」の字形についての一考察――「正字」、異体字、誤字――」は、ハイブリッドによる研究集会「日本における高僧伝の継承と展開」におけるもので、中国や日本の仏寺における写本の実態やその背後の仏教思想を考察している。 齋藤の学会発表「敦煌本『六祖壇経』整理の諸問題」は、国際仏教学大学院大学日本古写経研究所令和四年度第二回公開研究会におけるもので、また齋藤「『続高僧伝』雑科声徳篇の諸問題―釈真観伝とその周辺」は、東北大学三浦秀一先生退休記念研究集会「中国古典学とその広がり」におけるものであり、どちらも招待講演である。 いずれも来年度の研究に生かされるはずである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、研究代表者の佐竹保子は、おもに詩文作品を対象にし、研究分担者の齋藤智寛は、おもに仏典や禅語録を対象にして、文学観や詩文の実作と仏教 哲学・仏教思想との、顕在的および潜在的関わりについて考究していく。もとより、従来通り、佐竹は仏典や禅語録も研究範囲に含めているし、齋藤も詩文作品 をよく検討している。双方の疑問点や解読が困難な箇所を相互に教示しあい、また双方の新たな知見を速やかに交換し合って、認識の共有をはかる。今年度は最終年度でもあるので、両者の知見を複数の論文にしてまとめとする。 研究計画は変更しない。研究を遂行する上での解決困難な課題も、今のところは見つかっていない。
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