研究課題/領域番号 |
21K00338
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
市川 真理子 東北大学, 国際文化研究科, 名誉教授 (80142785)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 劇場 / ステイジング / 楽屋正面壁 / 舞台道具 / 楽屋 / 椅子 / テーブル |
研究開始時の研究の概要 |
近代初期イギリスの商業劇場における上演は、書割を使用しない簡素なものだったが、舞台道具が有効に使用された。本研究で扱うテーブルや机、各種の腰掛(椅子、スツール、ベンチなど)は、一見マイナーなものであるが、これらは、一般に認識されているよりもはるかに頻繁に、時には非常にリアリスティックな方法で、使用されている。本研究は、こうした最も基本的な舞台道具の使用方法や、舞台への搬入や舞台からの搬出等に関する慣習などを考察する。また、それにより、舞台構造や楽屋内部の使用方法に関する諸問題の解明のために、新たな視座を提供することもできるはずである。
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研究実績の概要 |
大別して、次の三つの営為から構成される研究を行った。1.劇テクストの調査・分析によるデータ収集、2.関連する諸研究の調査および研究、3.理論の構築、論考の作成。1と2を行いながら、本年度は、特に3に力を入れた。以下、それぞれについて順に記す。 1. 当時の演劇関係文書(現存する上演用台本等)や観劇の記録や舞台への言及を含む文書や作品、劇作品自体などを調査対象として、問題解明のための証拠や手掛かりとなる情報や例の発見に努めた。本年度は、特に国王一座に関係のある劇テクストを中心に調査した。 2. 近代初期イギリス演劇および関連諸分野の研究動向を常に把握しながら研究を進めていくために、上演研究、テクスト理論、現存するマニュスクリプトの分析、当時の各劇団のレパートリー等に関する研究の調査を行い、とりわけ上演研究の諸論文から、きわめて有益な示唆を得た。また、現行版本の注釈などからも学ぶところが多かった。 3.こうした調査を行いながら、ジョン・フレッチャーとウィリアム・ローリー共作の喜劇『水車小屋の乙女』の第一・二つ折り本テクスト(1647)に印刷されている "Six Chaires placed at the Arras" というト書きが、この劇が初演された第二グローブ座の舞台構造に関して示唆するところが大きいことに気がついた。他の劇テクストからも "at the arras" というフレーズを含むト書きを収集し、そのフレーズが第二グローブ座および第二ブラックフライアーズ座において、楽屋正面壁の中央開口部に言及するために使用された可能性について検証した。それに関する論文“At the Arras: What Is the Location Implied in This Phrase?" を Shakespeare Bulletin に投稿し掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、最も頻繁に使われる舞台道具である椅子の設置に関する問題を扱い、それを国際雑誌に投稿し、掲載された。その過程を通して、今後につながる極めて有益なコメントを得ることができた。 しかし、残念ながらブリティッシュ・ライブラリーやフォルジャー・シェイクスピア・ライブラリー所蔵のマニュスクリプトを調査することができなかった。そのため、重要なテクストの事実を確認することができないままになっている事例がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後も下記の3種類の調査研究を継続する。 (1)劇テクストの調査・分析によるデータ収集の継続:データの収集とその整理を続ける。可能な限り、オリジナルテクストに当たる。そのため、ブリティッシュ・ライブラリーやフォルジャー・シェイクスピア・ライブラリーなどの研究図書館での調査を行う。 (2)関連する諸研究の調査および研究の継続:近代初期イギリス演劇および関連諸分野の研究動向を常に把握しながら、研究を進めて行く。劇場研究、上演研究、劇団研究、書誌学等は当然ながら、劇作品の現行諸版本の調査も必要である。 (3)研究成果の発表:研究を健全に発展させ、最善の形で完成することができるようにするために、時折、研究計画の軌道の修正の必要があるか検討する。そのため、研究の一端をなす問題に関して論文を書き、雑誌に投稿したり学会発表を行ったりして、オリジナル・ステイジングや関連諸分野の研究者たちのリヴューを得ることができるようにする。これまでに得た研究成果をもとに、今後は、視野を広げて、別の舞台道具の使用方法にも目を向ける。例えば、椅子同様に、最も頻繁に使われる舞台道具であるテーブルや机の設置に関する情報を得ることができるよう努める。その調査をとおして新たな見解を得ることができるのではないかと、期待している。
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