研究課題/領域番号 |
21K00347
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
吉川 朗子 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (60316031)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | William Wordsworth / 文化的景観 / 英国湖水地方 / 文学の受容 / 引用・抜粋 / 印刷文化 / 文学作品からの引用 / ワーズワスの受容 / 受容 / 引用 / 湖水地方 |
研究開始時の研究の概要 |
英国ロマン派詩人ウィリアム・ワーズワスの詩学は、自然風景に対する我々の感情的・審美的・倫理的態度の形成にいかなる影響を与えてきたのか、本研究ではこれを、詩歌選集・新聞・雑誌・ガイドブック・広告・自然保護運動パンフレットなど様々なメディアにおける引用・抜粋の分析を通して考察する。ワーズワスの言葉が本来のテクストを離れ、効果的な引用・挿絵などメディアの工夫、パロディ、観光産業による利用などによって社会の隅々にまで浸透し、人々の自然環境に対する意識を変え、世界遺産として認められる湖水地方の文化的景観を産み出していく様子を浮彫にする。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、サブテーマ①「アンソロジーとしてのガイド」について、これまで集めてきた資料に加え、大阪大学、関西学院大学、東京大学の図書館に赴いて更なる資料調査を行い、『逍遥』から『序曲』へとワーズワスの代表作が変化していく様を精査し、考察をまとめた。令和6年5月の日本英文学会で発表(招待発表)後、論文にまとめて公表する予定である。サブテーマ②「Guide to the Lakesからの引用、借用、その他の影響」については、まずJiaotong-Liverpool University(中国)に招待されて、ワーズワスの旅行案内書が20世紀半ばに至るまで、旅行文化に影響を与えたさまについてzoomで講演した。またこの案内書に示されたワーズワスの樹木の多様性についての考え方や “Yew-Trees”という詩が、多くの旅行案内書に引用されることで、自然保護的な考え方にどう影響していったかを考察し、University of Derby(英国)の招待をうけてzoomで講演を行った。サブテーマ③「自然保護運動」については、依頼を受け、この旅行案内書をパストラルとして読み、伝統的なパストラルが自然保護運動に繋がっていく様子を考察した論考を執筆した。 夏の長期休暇には、大英図書館、ケンダル図書館などでアンソロジーについての資料調査を行った他、ワーズワス夏季国際学会で、Guide to the Lakesに見られる共感覚的な自然との交流について、研究発表をおこなった。この内容を今後膨らませて、イギリス・ロマン派学会50周年記念論集に発表する予定である。 その他、イギリス・ロマン主義から現代詩へといたる世界観の変遷をおった書籍について、依頼を受けて書評を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、活字化された論文は書評1本だけであるが、計6本の論文を執筆した。これらはこれから逐次公刊される予定である。また、国際学会1件で研究発表を行って活発な意見交換を行った他、この学会で知己を得た研究者を通して、中国、イギリスの大学から招待され、zoomを利用した講演を2つ行った。内外での資料調査も十分行えた。その意味で、充実した研究成果をあげられたと考えており、(2)「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、まず5月の日本英文学会において、アンソロジーとしてのガイドブックという観点から、ワーズワスの『序曲』受容の様子を発表し、これを論文として仕上げる予定である。次いで5月半ばには、島根大学のPeter Cheyne氏の招待をうけて、ワーズワスの旅行案内書のもつ学際的な特徴について話をする。 国際学会としては、5月末にマルタ大学におけるイギリス・イタリアの文学交流に焦点を当てた学会において、ワーズワスのイタリア旅行における詩について、そこに見られるミルトンや自作の詩の引用の効果について発表する。また、3月に話した内容を発展させ、生物多様性についてのワーズワスの考え方を『湖水地方案内』における樹木描写の中に探り、その考え方が、多くの旅行書に引用された詩「イチイの木」を通して、広く樹木保護運動に影響を与えた様について考察し、8月のワーズワス国際学会で発表する予定である。 これらの活動を通して、4年間の研究の成果をまとめていきたい。
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