研究課題/領域番号 |
21K00350
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
吉田 直希 成城大学, 文芸学部, 教授 (90261396)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | ゴシック / 理性 / 感受性 / 超自然 / 財政=軍事国家 / フォーラム / ホイッグ主義 / メソディズム / イギリス公共圏 / コーヒーハウス / ジャコバイト / 公共圏 / ナショナル / トランスナショナル / 消費文化 |
研究開始時の研究の概要 |
18世紀イギリスにおいては、シャフツベリーが理想とした合理性、礼節、審美的感受性を特徴とするイギリス公共圏は、マンデヴィルが説く性的情念と金銭欲に支配された世界でもあった。そこで、本研究では、ジョン・ブリュアの「財政=軍事国家」論を補助線としつつ、イギリス公共圏文化の多様性をナショナルな側面とトランス・ナショナルな側面から捉え直していく。その際、ハーバーマスの公共性概念を【1】中間団体によるナショナルな公共圏【2】トランス・ナショナルな消費文化【3】長い18世紀の歴史化という3点から批判的に検討し、イギリス公共圏文化の多様性を歴史的に精査していく。
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研究実績の概要 |
18世紀のイギリスでは、啓蒙主義によって理性によって感受性が抑制されるようになり、小説という新しい文学ジャンルの誕生とともに、超自然的な出来事に対する関心は次第に薄れていったと考えられてきた。しかしながら、1760年代以降、理性と感受性の力関係は微妙に変化していく。それまで非理性的な感受性を排除してきた小説が、超自然的なものに正面から向き合い、それをゴシックとして積極的に表象するようになると、恐怖の感受性そのものが社会生活に受け入れられ広く浸透していったのである。このような超自然的な力に対する感受性の変化を歴史的に考察することを目標として設定し、テクストの精読を行い、その成果をシンポジウムにおいて発表した。具体的には、Daniel Defoe、Henry FieldingやWilliam Hogarthらがどのように超自然的なものの表象に取り組んだのかを概観した後、Horace WalpoleのThe Castle of Otranto (1764)における超自然的な力の「小説化」が表すポリティックスについて報告を行った。特に18世紀の亡霊言説が「小説化される」過程で、読者の「恐怖の感受性」が現実世界のポリティックスへと向かうようになる理由を検討した。ゴシック小説の読者は、物語世界に没入することはなく、「現在」の視点から作品に表象される過去の超自然的な力を客観的に理解しようとする。このとき読者は、ゴシックが現実の資本主義社会と取り結ぶ関係性に気づき、理性と感受性の対立に新たな意味を見出すことができるようになることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた複数回の研究会が延期されているため。
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今後の研究の推進方策 |
長い18世紀を歴史学での時代区分として捉えるだけでなく、本研究で明らかになる新たな公共圏の多層性をイギリス現代史の成果と接続する。18世紀公共圏文化に関するこれまでの研究成果が今後のイギリス文化研究に不可欠であることをアメリカ18世紀学会のシンポジウムで発表し、新たな研究の潮流を創造する。そのために、①20世紀の福祉国家イギリスにおける知の軍事化②ポスト新自由主義の文学研究に関する理論的検討を第1段階から継続して行い、最終段階では、18世紀の公共圏文化の多層性を、ナショナル、トランスナショナル両面から総括し、長い18世紀に関する文化研究の方向性を提示する。
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