研究課題/領域番号 |
21K00353
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
中村 善雄 京都女子大学, 文学部, 准教授 (00361931)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | タイプライター / エコノミー / 親密圏 / ヘンリー・ジェイムズ / 写真 / 自動書記 / 口述筆記 / スピリチュアリズム |
研究開始時の研究の概要 |
19世紀に登場したタイプライターによる口述筆記は、作家にとって執筆の高速化や身体的負担からの解放を意味した。一方で、それは作家の親密圏にタイピストという異性の他者を加えることとなった。本研究ではこの状況を踏まえ、機械/人してのタイプライターの存在によって、作家の執筆環境に生じた変容と影響をメディア論的/文学的観点の両面から総合的に検討していく。具体的には、①タイピストから見た作家像並びに創作過程の検証、②口述筆記に伴う創作スタイルと文体の変化、③打鍵音が作家に齎す心理的影響に関するアフェクト論的考察、④メディア・テクノロジーと常時「接続」するタイピストの意識の変容を主たる課題とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、執筆行為における男性作家と女性タイピストの協働作業や書字産業への女性の進出、タイプライターとオカルティズムの親和性を知る上で、ヘンリー・ジェイムズと彼の秘書セオドラ・ボサンケットとの関係性に着目した。具体的には二人の実際の創作活動やボサンケットの抑圧された書くことの欲望、ジェイムズ家とボサンケットの不和やジェイムズの死がボサンケットに与えた影響について考察を進めた。それと共に、フリードリヒ・キトラーやマーシャル・マクルーハンのメディア論に対する理解を深めていった。その研究成果を2023年2月出版の『19世紀アメリカ作家たちとエコノミー─国家・家庭・親密な圏域』(彩流社)に所収された論考「親密圏のジェイムズとボサンケット─タイプライターのエコノミーと書くことへの欲望」にて発表することができた。また当該課題に対する一次資料を求めて、2月末にはボストンでの海外調査を実施した。主としてハーバード大学のワイドナー図書館とホートン図書館にて、ボサンケットに関する一次資料の収集やボサンケットの前任者であるメアリ・ウェルドとジェイムズの書簡のやり取りを調査した。その他、研究発表としては中・四国アメリカ文学会第 50 回大会にて、シンポジアム「トランスエスニック・ネットワークが結ぶ「アメリカ」/「アメリカ文学」」の司会・講師を務めた。また、「父子をめぐる〈虚‐実〉のトポス―スピルバーグの『未知との遭遇』から『フェイブルマンズ』まで」と題した論考を執筆し、2023年4月に出版の「父と息子の物語;ユダヤ系作家の世界」(彩流社)に所収される予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は2023年2月に出版された『19世紀アメリカ作家たちとエコノミー─国家・家庭・親密な圏域』(彩流社)に「親密圏のジェイムズとボサンケット─タイプライターのエコノミーと書くことへの欲望」と題した論考が所収され、予定していた研究成果を発表することができ、計画は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度において、エルキ・フータモを代表格とするメディア考古学の枠組みのなかで、タイプライターが果たした歴史的役割や同時代に発展したもう一つの打鍵のメディアである電信との親和性を踏まえつつ、タイプライターが作家の創作行為に変容を齎すだけでなく、作品のテーマや文体にも影響を与えている点を明らかにしていきたい。併せてその研究成果を図書という形で発表したいと考えている。
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