研究課題/領域番号 |
21K00363
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
石川 隆士 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (60315455)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | イェイツ / 英文学 / ケルト / 竪琴 / 螺旋 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は空間に対する意識の変遷を、竪琴と螺旋という二つの修辞を基軸とした風の表象という側面から明らかにする。 古来から世界の秩序の象徴であった竪琴が、ロマン主義以降、照応的調和の象徴となる。一方、螺旋は多様な存在が互いの関係を見出しながら実現される生成的な調和を表象し、特に20世紀以降、世界の多元化に符合し、顕著にたち現れる。この照応的調和から生成的調和への変遷は、自らを取り囲む空間の内なる原理を積極的に創造する意識への移行と連動していると仮定できる。この自らを取り囲むものとの「見えざる関係」を最も本質的に表象するのが風である。この風を導き手とし、照応的調和から生成的調和への変遷を追究する。
|
研究実績の概要 |
本発表は、自らを取り囲む空間に対する人間の意識の変遷を、風の表象という側面から明らかにするものであり、「竪琴」と「螺旋」という二つの修辞をその機軸とする。「竪琴」はギリシャ神話の昔から世界の体系性の象徴であったが、ロマン主義以降、自然が弾き手となる「イオリアの竪琴」が「照応的調和」の象徴となっていった。一方「螺旋」は混在する多様な存在が互いの関係を見出しながら実現されていく「生成的調和」を表象している。本研究の二つの学術的問い「仮定される照応的調和から生成的調和への移行がどのように生じたか」、そして「生成的調和」の修辞たる『螺旋』はヨーロッパ文化の基層をなすケルト文化が、いわば再発見の形で顕在化したのか」のうち前者について、「イオリアの竪琴」が18世紀のイギリスに始まり、ヨーロッパを席巻し、19世紀のアメリカ、特にアメリカロマン派に熱狂的に迎え入れられた、ヨーロッパからアメリカへの輸入期となる18世紀末から19世紀に焦点を絞り調査を進めている。特にスイス、バーゼルでは、「イオリアの竪琴」の概念が現実的に最大化された具体例として、1789年のGeorg Christoph Lichtenbergの手記Gottinger Taschen CalenderとE.T.A Hoffmannの作品を基に、現地調査を行った。またアメリカでは19世紀初頭の「イオリアの竪琴」についての熱狂に関する文献収集を行うと同時に、19世紀アメリカロマン派作家群に関する「イオリアの竪琴」の受容に関する個別性を精査し、H.D. Thoreauに代表される単純なる受容から、Nathaniel Hawthornに代表される逸脱、離反を読み取ることで、「照応的調和」から「生成的調和」への移行の胎動とその原因を考察している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が古代ギリシャから現代にわたる大きな時代的枠組みを取る中、本研究の主要な二つの問いの一方である、「なぜ照応的調和から生成的調和への変遷が生じたか」に関し、「照応的調和」から「生成的調和」への移行期における重要なポイントをいくつか特定することに成功しており、そのポイントをさらにヨーロッパにおけるものとアメリカにおけるものとに区分し、集中的に調査ができているため。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の二つの学術的問い「仮定される照応的調和から生成的調和への移行がどのように生じたか」、そして「生成的調和の修辞たる『螺旋』はヨーロッパ文化の基層をなすケルト文化が、いわば再発見の形で顕在化したのか」のうち前者に関しては、調査が大きく進展している。後者の問いに関しては、前者の問いが明らかになることと連動しているため、ケルト文化と生成的調和の本質的な同位性についての調査も実施しながら、後者に関する考察を進めていく。
|