研究課題/領域番号 |
21K00364
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
越 朋彦 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (70453602)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 子ども表象 / 現代イギリス小説 / イギリス文学 / 現代小説 |
研究開始時の研究の概要 |
子どもを中心的主題とする小説(childhood novels)は、1970年代以降の子どもに関する学術研究の新動向や子どもを取り巻く社会状況の変化を背景に、現代イギリス文学における一つの有力なジャンルを形成している。現代世界の子ども概念の揺らぎを反映したこれらの小説は、近年欧米の研究者の関心を集め始めているが、体系的な研究はまだ数少ない。 そこで本研究では、1970年代から2010年代までのchildhood novelsを取り上げ、同時代の学問的および社会的コンテクストから抽出したテーマ群に基づいて作品内の子ども表象を多角的に読み解いていく。
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研究実績の概要 |
2022年度は、子どもを中心的主題とする現代イギリス小説(チャイルドフッド・ノヴェル)の中から3作品を取りあげ、以下の点を明らかにした。 (1)マーゴ・リヴジー『ジェマ・ハーディの飛翔』(Margot Livesey, The Flight of Gemma Hardy, 2012;未訳)・・・本作の主人公ジェマは、国家にも家族にも依存しない社会的孤児として、新自由主義的な自己の理念を体現した存在である。彼女は、新自由主義的主体――自助の規範を内面化し、「自分自身の企業家」としての自律的な選択を行うことのできる子ども――として表象されている。 (2)ニック・ホーンビィ『アバウト・ア・ボーイ』 (Nick Hornby, About a Boy, 1998)・・・この小説は、ディケンズ小説における「大人-子ども関係の逆転」というモチーフを現代小説に応用した作品である。(ニール・ポストマンが言うところの)「子ども化された大人」と「大人化された子ども」である本作の二人の主人公たちは、互いの逸脱的属性を交換することで、それぞれの年齢集団に相応しい人間(標準的な「大人」と「子ども」)へと変容を遂げていく。 (3)トビー・リット『デッド・キッド・ソングズ』(Toby Litt, deadkidsongs, 2001; 未訳)・・・この小説においては、新しい子ども社会学がしばしば批判の対象とする発達論的子ども観が解体されている。『デッド・キッド・ソングズ』では、子どもの成長を「無垢/非合理→経験/理性」という単線的発達と見なす本質主義的な観点が、ビルドゥングズロマン的物語構造の転覆を通じて退けられている。 (1)の研究成果を論文としてまとめ発表した。(2)と(3)の検討結果は2023年度中に刊行予定の著書において発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況はおおむね良好である。その理由として、昨年度行った理論枠組み構築の成果に基づきながら、1次資料の読解と2次資料の収集・分析を同時並行的にバランス良く進められたことが挙げられる。その作業の結果得られた結論的洞察(現代イギリスのチャイルドフッド・ノヴェルが、多様でオルタナティヴな子どものあり方の可能性へ読者の目を開かせるジャンルであること)を明確に意識することによって、個別作品に関する考察のアウトプットを円滑・速やかに行うことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度・2022年度に取りあげた諸作品の他に新たに3作(サラ・モス『夜間の目覚め』[Sarah Moss, Night Waking, 2011; 未訳]、スティーヴン・ケルマン『ピジョン・イングリッシュ』[Stephen Kelman, Pigeon English, 2011年;未訳]、ジョナサン・トリゲル『少年A』[Jonathan Trigell, Boy A, 2004; 未訳])を加えた計8作のチャイルドフッド・ノヴェルに関する論考をまとめた著書を、2023年度中に発表する予定である。同書の結論においては、作品の精読に基づく各論を総括し、チャイルドフッド・ノヴェルのジャンルとしての本質的特徴(1. 子ども(らしさ)の社会的・文化的構築に関わる言説や制度への批判的視座 2. 過去の文学伝統の換骨奪胎を通じた子ども概念の再解釈 3. 子どもの造形そのものの多様性)を抽出したうえで、これらの小説が「子どもであることの複数性」を主題化している点を明らかにする。
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