研究課題/領域番号 |
21K00366
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
石倉 和佳 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (10290644)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | イギリスロマン主義 / 太平洋 / ハワイ / 航海記 / ジョージ・バンクーバー / イギリス海軍 / G.バンクーバー / 海洋文学 / 旅行記 |
研究開始時の研究の概要 |
18世紀の太平洋諸島の「発見」から19世紀にかけて、帝国化していくイギリスにおける太平洋のイメージは複雑で錯綜したものであり、ハワイやタヒチなどの現地を語る言説の多くがキリスト教倫理や自然資源への利害意識に影響される傾向が見られた。しかしその中で、ロマン主義期の作品における太平洋に関連するモチーフや文学上の表象には、太平洋諸地域の現在性の意識によって醸成されたロマン主義期における時代精神の表出が見られる。本研究では多義的な様相を呈する太平洋に関する同時代資料を確からしさにおいて批判的に評価して利用し、その中でロマン主義期独特の太平洋表象がいかに同時代的文脈から生み出されたかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は、ロマン主義期の文学作品に現れた太平洋表象について、その特質と意義を明確にすることを目的としている。今年度は、G.バンクーバーによる太平洋探検の記録である彼自身による航海記を分析し、細部の描写を積み重ねながら観察したものを俯瞰的に描き出す語りの特徴と、アメリカ北西部沿岸に暮らす現地の人々に向ける視線の在り方について検討した。またこの検討を加えるにあたって、この航海記に描かれたたアメリカ原住民の人口減についての記述を事例として利用したマルサスの著作を検討した。バンクーバーの語りには、マルサスに比して現地の人々に対するまなざしに共感が含まれており、事実と想像しうる仮説的現象との間を縫うように語りが展開する箇所がある。この語りの様態について、ロマン主義文学との比較から今後も検討を加える予定である。以上のテーマについては、マルサスの人口論との比較も含めて論考としてまとめた。なお、昨年度資料収集したバンクーバー航海記の同時代書評について今年度も継続して検討を加えたが、航海記の理解を深める考察等は殆ど含まれていない印象を受けた。今後も書評に関しては検討を継続する。 その他今年度検討を行った事項としては、マルサス人口論に関するS.T.コールリッジとR.サウジーの書評等の検討、昨年度から継続しているW.バロックの博物館に関する考察、およびユートピア思想と太平洋との関連、がある。これらについてはは、十分な資料が得られないこともあり、論文等に纏めるに至っていない。次年度以降も継続して検討する。 今年度も昨年度に引き続きカルチュラル・グリーン研究会を開催し、研究発表を行った。また、コールリッジについてイギリス・ロマン派学会でシンポージアムを企画し、発表した。海外での活動は昨年に引き続き行っていないが、資料収集などは海外の図書館や資料館と連絡を取り随時進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は海外での資料収集が十分に行えなかった面はあるが、バンクーバー航海記について論文に纏めることが出来たこと、またその他にもコールリッジについての考察を纏めることが出来たことなどから、概ね順調であると考える。バンクーバー航海記の書評については、今年度の研究により、書評家が十分にバンクーバーの記述の意味を理解していない部分が散見されるが、これはバンクーバーの旅行記が同時代の同ジャンルのものに比して非常に精緻でかつ自己の観察に忠実に作られているためであると判断できる。これまでほとんど文学領域で分析されてこなかったバンクーバー航海記について、語りの文学的特質を掘り下げることが可能であるという見解に至ったことは成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、太平洋表象との関連が考えられるロマン主義作品の検討を行うとともに、バンクーバー航海記や同時代の太平洋関係の旅行記の分析を進める。太平洋表象はロマン主義の時代、クック旅行記やそのほかの海洋事情の報告などから、様々な情報とともにもたらされていたと考えられるが、マルサスの記述に見られるように狩猟中心の原始的な生活を行っている人々のいる地域という曖昧な理解で済まされてしまう場合が多かったと推測できる。また、太平洋諸島におけるヨーロッパ人との接触による疫病の伝搬はロマン主義期に広がったと考えられる。これらの点から今後は、「未開」の概念や疫病といった負の表象についても考察の範囲を広げ、ロマン主義作品の読解につなげていきたい。 今後は資料収集、学会発表などをおこないながら、論文に取りまとめ発表していく予定である。海外における調査もできるだけ行えるように準備をしたい。
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