研究課題/領域番号 |
21K00381
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
渡邉 真理子 専修大学, 文学部, 教授 (70389394)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 戦争小説 / 現代アメリカ文学 / 冷戦期 / 現代アメリカ小説 / ベトナム戦争 / 冷戦期再考 / 終末 / サバイバル / 戦争 / 災厄 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は現代アメリカ文学において表現されている災厄(戦争、災害、テロリズム)と人間の生のかたちを分析することで、第二次世界大戦後の冷戦期に「サバイバル」という主題の 生成と発展を定位する試みである。核の恐怖が兵器から原子力災害へ、世界戦争がテロリズムへと移行するなかで、アメリカ作家が紡いできたサバイバルの物語は私たちにとっても「生き延びるための文学」として有効である。このようにサバイバルの観点から行われる冷戦期アメリカ文学の再考は、アメリカの影響下にある戦後日本の歩みやポスト3.11の状況をも炙り出すとともに、感染症という今まさに私たちが直面している難題を文学から考える契機にもなるだろう。
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研究実績の概要 |
2023年度の実績としては、日本アメリカ文学会東京支部分科会において口頭発表「オブライエンの戦場とホーム――『恋するトムキャット』における愛の修辞学」を行うことができた。ティム・オブライエンが代表作『かれらが運んだもの』を発表した1990年代の仕事において、この小説はおそらくもっとも評価が低く、オブライエンを戦争作家として論じる数多くの研究書においても周縁的な扱いとなっている。しかし、この口頭発表では、ミソジニーとドメスティックプロットがその特徴であるとされてきた『恋するトムキャット』の物語のなかに、「愛」と「サバイバル」という作家の創作における重要なテーマを見出し、そこから彼のヴェトナム戦争小説を理解する鍵を確認した。、これにより作家ティム・オブライエンの1990年代のキャリアを総括するための素地が出来たのは有意義であった。 また、『アメリカ文学入門新版』(三修社)の小項目「越境」の執筆を担当した。ここではジャック・ケルアックの『路上』や、イシュメール・リードの『カナダへ逃亡』、ラッセル・バンクスの『大陸横断』、ティム・オブライエンの「レイニー河で」、ウィリアム・リースト・ヒートムーンの『ブルーハイウェイ』などの冷戦期ロードナラティブを例に、越境のモチーフからサバイバルという概念を確認し、それを20世紀アメリカ文学の系譜に位置づけることができた。 活字化された業績は少ない年度となったものの、ティム・オブライエンの2023年秋発表の最新小説『アメリカ・ファンタスティカ』の精読作業を通して、クライム・ノヴェル的要素やロード・ナラティブという型の採用に注目した。、過去の小説にもたびたび表れていた主人公が「嘘つき」である設定を、2020年前後の政治的状況と照らして再検討する必要があることが理解できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
冷戦期再考のヒントとなる多くの批評や作品の精読作業に時間がかかったことと、学会や学外の仕事が理由で当該研究のエフォート率が下がることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
遅れを取り戻すべく、2024年度は一年ほど休会していたアメリカ文学サバイバル研究会を再開する予定で、すでに五月に研究報告を予定している。また、延期していた海外での調査研究も行う計画である。それとともに2023年度に行った口頭発表を論文にする。また、2024年9月には日本ポー学会のシンポジウム(仮題「ポーと現代作家」)で報告することが決定しており、その原稿を活字化する見込みである。
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