研究課題/領域番号 |
21K00387
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池田 寛子 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (90336917)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | アイルランド文学 / 女性詩人 / 英語圏文学 / アイルランド女性詩 |
研究開始時の研究の概要 |
現代アイルランドを代表する女性たちの詩を綿密に読み込むことによって、詩人たちが自国の歴史や伝統との対話を通じて達成してきたこと、その挑戦を徹底検証し、現代社会における女性の文化的活動の展望を明らかにする。トランスナショナルなコンテクストに留意し、国境を問わないフェミニズムの潮流を視野に入れると同時に、アイルランドには限られないバイリンガル環境や少数者言語と共に生きることの意味を詩に探る。それぞれの詩人が展開する哲学的、宗教的思考をつぶさに検討し、そのエッセンスを抽出する。
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研究実績の概要 |
現代女性詩人のうち、今年度はエレーン・ニクリャナーン、ヌーラ・ニゴーノル、ポーラ・ミーハンの三者に焦点を絞り、現代アイルランドを代表する詩人として伝統をどのように革新し、記憶を継承しようとしているかについての調査と作品分析を進め、論文を執筆した。この三人はシェイマス・ヒーニーのノーベル文学賞受賞を受けて創設された「詩の教授」に選ばれた経験を共有している。三者の詩作の土壌の中心に語りの伝統とフォークロアがあることに着目した。アイルランド土着の伝統からインスピレーションを得て、三人は今を映し出す物語を紡いでいる。それぞれの作品に息づいているのは、アイルランドと根源的な結びつきを有し、かつ国境を問わない深いレヴェルの記憶であることを明らかにし、三人の詩に見出される伝統革新の試みを辿り、それぞれがなぜどのようなかたちで記憶と向き合い、伝えようとしているのかを検証した。 詩の精読の成果を『英文学評論』で公開した。アイルランド最初の詩とされる「アワルギンの歌」への応答としての二篇の詩、アイリーン・ニクリャノーンの詩篇「捕獲」およびポーラ・ミーハン 「砦に戻って」について詳細を検討し、訳と評釈を作成した。アイルランド最初の詩人アワルギンの歌は、アイルランドの遠い過去についての想像力を掻き立てるのみならず、アイルランドを越える契機を内在させている。詩に刻まれているのは、人とこの地球の関係をめぐる詩人たちの深い瞑想の痕跡である。詩の語り手はトゥアタ・デー・ダナンの女性詩人である。ミーハンの詩はミレジアン族に侵略される民族の側からの「アワルギンの歌」への応答になっている。ニクリャナーンの詩では、自然環境と「私」の一体感に呼応する形で「フレーム」とその内部の入り組んだ関係がイメージ豊かに変奏されていることを解説として添えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エレーン・ニクリャナーン、ヌーラ・ニゴーノル、ポーラ・ミーハン の三人とはメールで直接やり取りできた。それぞれの全詩集と選詩集から、詩の精読と分析を進めた。 NY universityに30年近く前のエレーン・ニクリャナーンとヌーラ・ニゴーノルの朗読と対談を収録した貴重なVHS Videoのデジタル化を依頼し、その完成を待っている。 エレーン・ニクリャナーンの作品には境界、枠、フレームのモチーフが頻繁に出てくる。ニクリャナーンの詩からは、それらの必要性および、それらを無化することの必要性をめぐる詩人の哲学的瞑想の跡を辿ることができるが明らかになった。これについて全作品を視野に入れた論文を準備している。 オスカー・ワイルドの母Speranzaやマライア・エッジワースのニクリャナーンの関心から、カトリックやプロテスタントといった宗派の違いを超えたアイルランド女性作家としての連帯を探る傾向を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度中にアイルランドに出張し、ヌーラ・ニゴーノル、ポーラ・ミーハンと面談の予定である。面談までに、ニゴーノルの「アワルギンの歌」への応答の詩についての質問事項をまとめておく。
アイルランドではニクリャナーンが長年編纂してきた 詩誌Cyphersのバックナンバーの調査を進める。ニクリャナーンのエッセイ ‘Who Needs the Critics?’を入手する。
ヌーラ・ニゴーノルはアイスキュロスの古典的悲劇『ペルシア人』をアイルランド語に翻訳し、その上演がネット上で公開された。この翻訳はアイルランド独立百周年を記念する2022年へのニゴーノルの思いが込められているという。『ペルシア人』は、ペルシア戦争のサラミスの戦いにおける小国ギリシアが大国ペルシアに勝利とペルシア人たちの悲哀を描いた作品である。この物語がアイルランドの独立とどうリンクするのかに留意し、アイルランド語版を精読する予定である。
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