研究課題/領域番号 |
21K00392
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
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研究機関 | 山形県立保健医療大学 |
研究代表者 |
梶 理和子 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 准教授 (60299790)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 女性作家 / 君主制 / 絶対王権 / セクシュアリティ / 公的利益 / 美的感覚 / 近代商業社会 / 植民地 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、名誉革命を挟んだ17世紀後半から始まるイングランドの政治的・宗教的体制の変動を背景とした価値観、美的感覚の揺らぎと多様化の過程を、女性作家アフラ・ベーンと彼女に続く女性作家群の言説に探る。そこで、地中海、北アメリカやインド等の領域への「帝国的」野望の高まる王政復古期以降、近代商業社会の形成と文学ジャンルの変遷の過程が、いかに感受性の変容と関係しているのかを、文学作品を含む多様な言説の分析を通じて検証することを試みるものである。
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研究実績の概要 |
17世紀後半から始まるイングランドの政治的・宗教的体制の変動を背景とした価値観、美的感覚の揺らぎと多様化の過程を明らかにするために、アフラ・ベーンが劇作家として登場した1670年時の執筆・上演作品に焦点を当て、その悲喜劇に描かれる当時の王権、政治体制をめぐる問題の萌芽を検証した。そこで、喜劇作家として知られ、1680年前後に政治色の強い作品を創作するようになるとされるベーンが、そのキャリアの初期において、悲喜劇というジャンルを用いて、国王/君主に関わるセクシュアリティや、王権神授説、絶対王政、そして公的利益やコモンウェルスといった問題に高い関心を払っていたことを確認した。 チャールズ2世との婚姻によって、ポルトガル王女キャサリン・オブ・ブラガンザはタンジール、ボンベイという新しい領土、スパイスや砂糖、茶、陶磁器等とともに新たな海外文化をもたらし、イングランドの海外進出の欲望を増大させた。その一方で、王位後継者をもたらさないカトリックの王妃に加えて、国王に影響力を持つ愛人たちや(1669年頃の密かな改宗が1673年の審査法で公となる)王弟、ヨーク公ジェームズと、宮廷においてカトリックの存在感は大きく、それは(集団ヒステリー的な)カトリック嫌悪や王位継承排除危機といった国家を揺るがす状況へと繋がっていく。 このような状況は1680年前後の問題として注目されるが、1670年以前に問題化していたことが、ベーン初期の(執筆のみを含む)悲喜劇3作品に読み取ることができた。つまり、1660年代に流行した王政復古を祝う悲喜劇の形式を用いながら、王権にまつわる神聖さが否定されることはないが、その危険性が示唆されることによって、共和政時代を経験したイングランドへの国王の帰還は、かつての王政を復活させるものでなく新たな政治形態の模索が、1660年にすでに始まっていたことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度からの課題の1つであった資料収集とその整理、それを基盤とする分析の遅れが続いたため。海外リサーチができなかったことによるだけでなく、海外からの書籍(ファクシミリ版を含む)の取り寄せに数か月を要することがあったり、(その結果)入手できなかったりと、前年度の不足に加え、本年度に予定していたグローバルな植民活動によって、世界の政治・経済的中心となっていくロンドンの変化の起点を探るためのテクストや資料の入手も進まなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度、2年目と計画が大幅に遅れているために、大きく計画の変更が必要であるために、女性作家の創作ジャンルの変遷の意味を考察するために、アフラ・ベーンの作品と長い18世紀の女性作家の演劇・散文作品との比較検討をおこなう時期を次年度に延期する。本年度においては、ベーンの演劇作品のジャンルを論じることを目的として、王政復古期イングランドが経験する政治的、宗教的動乱、経済的危機や発展、社会的変動等との関連から、文学形式と情動の表象([不]可能性)との関係性を検証する。 その際に、王政復古期の宗教・政治・商業的状況の変動の誘因、影響を王妃、国王と宮廷の女性たちの私的/公的身体性に探るために一次・二次資料の収集の遅れを取り戻し、世界の政治・経済的中心となっていくロンドンの変化が、感受性、美的感覚、道徳的判断に関わる問題とどのように結びつき、18世紀の思想(ヒュームやスミス等)の基盤となるかを考察する。
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