研究課題/領域番号 |
21K00408
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
中村 寿 秋田大学, 教育文化学部, 講師 (40733308)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | ドイツ文学 / ユダヤ主義 / マックス・ブロート / 『自衛―独立ユダヤ週刊新聞』 / フランツ・カフカ / テプリッツ / 『自衛-独立ユダヤ週刊新聞』 / <プラハのドイツ語文学> |
研究開始時の研究の概要 |
「古典的現代」と称される20世紀初頭のドイツ語作家には、『変身』(1912)で有名なプラハ出身の作家フランツ・カフカ(1883~1924)ほか、旧ハプスブルク帝国領中・東欧出身のユダヤ人が多く含まれる。彼らが影響を受けていたのは、伝統宗教としてではなく、民族主義(=シオニズム)としてのユダヤ主義だった。本研究では、ユダヤ人による新聞と小説を素材に、ナショナリズムと文学の相互作用を検証することのほか、疫病報道の詳細解明が目指される。読解の中心的な対象になるのは、『自衛―独立ユダヤ週刊新聞』(1907~1938)とマックス・ブロート(1884~1968)の小説である。
|
研究実績の概要 |
『自衛―独立ユダヤ週刊新聞』(1907~1938)はプラハを拠点として活動したユダヤ機関の新聞である。ブロート、カフカらプラハのドイツ語作家はこの新聞に著作を提供し、その結果、『自衛』は、作家による相互批評の場としての役割を果たすことになった。本研究は、『自衛』をはじめとするユダヤ機関のジャーナリズムに発表された文芸批評とブロートの小説に光を当てることを通じて、一次大戦期のプラハで実践された文学・文化活動の一端を明らかにする試みである。 2022年度初め、入構制限が継続されていたため、マイクロフィルムビューワの購入は見送った。報告者は前年度に引き続き、ユダヤ機関の新聞雑誌の分析に対して、ブロートの小説『ユダヤ人の女たち』(1911)の翻訳を優先することにした。夏季休業中に完訳、後期授業期間から訳稿の修正に取りかかり、出版社に完成稿を提出した。年度末に出版社から訳注等の指示を受け取り、年度末までに訳注を完成させた。報告書作成の現時点(2023年5月)では、ブロートの年譜作成等の作業に取り組んでいる。 <プラハのドイツ語文学>研究、カフカ研究では、ブロートがカフカにユダヤ主義をめぐる議論を仲介したとされている。『ユダヤ人の女たち』の読解を進めた結果、一次大戦前、1911年の時点では、ブロートよりもカフカのほうがユダヤ主義をめぐる議論に深い理解を示していたことが明らかとなった。『ユダヤ人の女たち』では、シオニズムについても言及されているが、作者ブロートはユダヤ主義を流行現象程度のものとしか認識していなかった。 以上の研究経過を研究会・講演会で発表したほか、ヨーゼフ・ロートの小説『ラデツキー行進曲』(1932)について、一般新聞に記事を提供した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『ユダヤ人の女たち』の訳書は訳注等も含め、2022年度末までに完了させる予定であった。しかし、訳稿の修正に時間がかかってしまった。2023年夏季休業前までに訳書を完成させ、年度内の商業出版を計画している。
|
今後の研究の推進方策 |
①『ユダヤ人の女たち』(1911)の訳書出版を実現させるほか、ブロートのほかの小説の読解を進める。なかでも『アーノルト・ベーア―あるユダヤ人の運命』(1912)の読解・翻訳・分析に取り組む。カフカの代表作『判決』(1912)の背景には、『ユダヤ人の女たち』、『アーノルト』の影響があったことが指摘されている。ブロートの翻訳・紹介を通じて、<プラハのドイツ語文学>をめぐる議論の土台構築に貢献する。 ②マイクロフィルムビューワを設置し、フィルムの整理・読解を進める。ユダヤ系新聞から、一次大戦に対する民族主義者の反応を明らかにする。
|