研究課題/領域番号 |
21K00413
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
津森 圭一 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70722908)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | プルースト / ウェルギリウス / ヴェルサイユ / 庭園 / 古典 / オウィディウス / ギリシア神話 / ロクス・アモエヌス / フランス / 古典人文教養 / 教育 |
研究開始時の研究の概要 |
20世紀初頭の作家マルセル・プルーストは、第三共和政期の公的な中等教育と高等教育の受容者であった。『失われた時を求めて』にその受容の詳細を見ることはできないが、当時の教育課程で修得されたギリシア・ローマの文芸への言及は頻繁になされる。本研究が目指すのは、ギリシア・ローマの古典人文教養を、プルーストが創作でいかに活用しているかを体系的に把握することである。大学教授ブリショや主人公の年長の友人ブロックは、古典人文教養を滑稽なまでにひけらかし、周囲から失笑を買う。そのような設定の必然性はどこにあるのか。古典人文教養が当時の社会で果たした役割を、教育制度、読書、創作の観点から解明する。
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研究実績の概要 |
ニ〇ニニ年度に発表した研究業績の概要と、本研究課題における位置づけ、今後の展開について記す。ニ〇ニニ年十二月に『日本フランス語フランス文学会関東支部論集』に発表した論考「『失われた時を求めて』の登場人物の庭園愛好――庭とともに人生を歩むシャルリュス男爵――」では、小説の主要登場人物の一人であるシャルリュス男爵にとって、庭とは絵画や建築とならぶ芸術性を備えた場であるだけでなく、通常は何としても隠したいと考える性的嗜好が解放される場でもあることを示した。またそのような庭は、生垣や壁のような囲いに区切られ、一見すると外界から遮断された閉じた空間として立ち現われるが、その囲いには隙間があり、そこから視線や情報が貫通してしまう場でもある点、さらに、庭は、日常生活では抑制されている感情や想像力が表出する場でもある点を明らかにすることができた。本論文執筆のための調査の段階において、本研究課題の観点から、ヴェルサイユ庭園などのフランス庭園内の彫刻や碑文などで、西洋古典文学の作品への暗示が行わていることに強く関心を持った。特に、ラテン文学の研究家であり、十九世紀末から二十世紀初頭にかけてヴェルサイユ宮殿美術館長であったピエール・ド・ノラックの著作を通して、この時代の文芸において、ヴェルサイユ宮殿や庭園は、十七世紀の古典主義文学に結びつけられるだけでなく、西洋古典文学の受容の場でもあることがわかった。プルーストにおける、ヴェルサイユを中継点とした西洋古典文学の受容については、ニ〇ニ三年度中に学術論文として発表予定である。さらに、プルーストにおける西洋古典文学全般の受容に関する調査を進めている。その成果の一部として、『失われた時を求めて』におけるウェルギリウスの『農耕詩』の受容に関する研究論文を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年4月研究開始時に予定していた研究調査のためのフランス滞在計画が実現せず、必要な文献を実地に収集できない状態にあったが、2023年2月に短期間であるがと渡航がかない、フランス国立図書館で若干の調査を行うことができた。しかし調査期間が十分でなく、予定と比べて遅延した状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
ニ〇ニ三年度中に、二度の文献調査を目的としたフランス滞在を予定している。不足している文献を調査・収集し、学術論文を執筆する。
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