研究課題/領域番号 |
21K00417
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
武田 利勝 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (80367002)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ドイツ・ロマン主義 / アラベスク / アナモルフォーシス / ロマン派の言語哲学 / シュレーゲル兄弟 / 言語感性論 |
研究開始時の研究の概要 |
啓蒙主義とロマン主義、科学と文学、信と知、自然と意識、必然性と偶然性、国民文学と世界文学――1800年前後の思想は、このような対立、つまり「分裂=危機(Krisis)」の自覚と克服を本質とする。そうしたなか、A.W.シュレーゲルの言語感性論は、そもそも翻訳をその前提としていることからもわかる通り、異質にして対立的なあらゆる両極の媒介を目指すものである。本研究は、(1)(2)のプロセスを経て、その言語感性論が1800年前後のヨーロッパにおける知的ネットワークの重要な交差点であったことを明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
2022年度は、前年度に明らかになったアウグスト・ヴィルヘルム・シュレーゲルの言語感性論における詩学的特性を、弟フリードリヒが同時代に展開したパラドックスの美学と結びつけつつ、研究を進めた。 4月に九州大学独文学会で行った研究発表では、フリードリヒ・シュレーゲルの小説『ルツィンデ』が、アウグスト・ヴィルヘルムの言語論と同様、フィヒテ的観念論とスピノザ的実在論という二極が愛を通じて結びつく瞬間を表現したものであることを明らかにした。 また、10月に参加した日本独文学会シンポジウムでは、上記のパラドックス的関係が、ロマン派美学においては、文学テクストの絵画的表象を通じ、一種のアナモルフォーシス(二重絵画)として現れることを明らかにした。アナモルフォーシスの概念がドイツ・ロマン派の美学研究に導入されたのはおそらく初めてのことであるが、これによって、従来よく指摘されてきたロマン派芸術のアラベスク的傾向と、それに対する古典主義的・一点透視図法的性質とのパラドクシカルな併存関係が説明可能となった。 同月に社会思想史学会で行ったセッションでは、アナモルフォーシスによって導入されるアラベスクの美学がいかにして近代社会批判に結びつくか、そしてそれが来たるべき社会の理念たり得るかを、フリードリヒ・シュレーゲルの共和制論をもとに考察し、他の提題者、また参加者と活発な議論を展開した。 以上の成果は、2023年度中に論文としてまとめる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度中の研究の主軸はアウグスト・ヴィルヘルム・シュレーゲルからやや離れ、フリードリヒ・シュレーゲルに移ってしまったこともあり、進捗状況としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度である2023年度には、『アテネーウム断章』をはじめ、シュレーゲル兄弟の共同作業の研究を通じ、彼らの言語理論に見られる共通点及び相違点を洗い出しながら、それぞれの独自性を検討していきたい。
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