研究課題/領域番号 |
21K00425
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鴻野 わか菜 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50359593)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ロシア文学 / ロシア美術 / ウクライナ美術 / ロシア文化 / 現代美術 / 東欧美術 / ロシア東欧文化 / 芸術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、近現代ロシア文化を理解する上で重要な特徴の1つである「文学と視覚芸術の密接な相関関係」を複数のジャンル研究を通じて広い視野から解明する。1950年代から現在までのロシア文学・文化を主な研究対象とし、【1】①文学と視覚芸術の融合例である諸作品、②各作家の文学・文化的伝統、哲学、活動、③文学・美術・演劇の融合として生じ、前述の作家達も参加した芸術運動、芸術祭等を分析する。【2】現代ロシアにおける文学と視覚芸術の融合の歴史性と独創性を、近代ロシア文化、同時代の世界文化とも比較し、【3】現代ロシア文化における「文学と視覚芸術の密接な相関性、ジャンル越境性、総合芸術性」を総合的に解明する。
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研究実績の概要 |
ロシア現代美術についての著書の執筆のために大部分の時間を充てた。2024年5月現在、再校を進めており、五柳書院より出版される。文化も国家の重要課題であるとされたソ連では、公認作家が手厚く保護される一方で、非公認作家は厳しい統制下に置かれた。一方、新生ロシアでは、検閲はいったん弱まったが、美術界や出版界にも市場原理が適応され、文化は他の娯楽やメディアとの競争にさらされることになった。この新しい状況下で、文化はいかに「生きのびよう」としたかについて問うことが本書の主題である。 一章の歴史篇では、ソ連崩壊前後から現在に至るロシア現代美術の30年余を、新生ロシアにおける美術の「サバイバル」のプロセス、ギャラリーや国際ビエンナーレの誕生、パフォーマンスアートの展開、ヨーロッパ最大の芸術公園ニコラ・レヴィネツにおけるサイトスペシフィックアートの取り組み、エカテリンブルク、ウラジオストク、ダゲスタンなどの各地域における現代アートの隆盛、検閲と統制の動向、戦争への反応などを軸に考察した。 二章の主題篇では、ソ連崩壊を体験した現代ロシア文化全体の問題である「過去へのまなざし」、ノスタルジー、国家の表象、ロシア美術におけるジェンダーやセクシュアリティ、コロナ期のアート、ウクライナ侵攻期の美術について検討している。また、ロシア文化の主要な特徴であるユートピア、宇宙への志向について、文学、思想とも比較しながら考察した。 三章の作家篇では、都市の写真を通じてロシア社会の変化を照射するイーゴリ・ムーヒンの作品、共生と宇宙を主題とするレオニート・チシコフ、自然と人間の関係を模索し、南極で世界初の国際芸術祭を開催したアレクサンドル・ポノマリョフ、ロシア・アヴァンギャルドの伝統を継承するウラジーミル・ナセトキンらの作品をとりあげた。
20世紀初頭のロシア象徴主義・モダニズム文学についての研究も進め、論考を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
著書『生きのびるためのアート――現代ロシア美術』を脱稿し、今後の課題も明らかとなった。今後は、ロシア現代美術と文学の相関関係の研究を続けつつ、ロシア現代詩、ウクライナ現代美術にも重点を置いて研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ロシア現代詩と現代美術の研究と成果発表として、ウラジーミル・ナセトキンの展覧会を企画する予定である。また、現代詩研究については、文献の調査・研究を進め、単著にまとめたいと考えている。 現代美術の研究においては、研究対象である作家(ニキータ・カダン、ターニャ・バダニナ、エカテリーナ・ムロムツェワ 、レオニート ・チシコフ)が参加する芸術祭・展覧会の調査、ならびに作家への聞き取り調査を実施する。 レオニート ・チシコフと共に作品を制作してきた児童文化作家マリーナ・モスクヴィナには、文献読解の補助を依頼して承諾されており、共同討議を行う予定である。
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