研究課題/領域番号 |
21K00427
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
宮嵜 克裕 同志社大学, グローバル地域文化学部, 助教 (00411075)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | マラルメ / 半獣神の午後 / エロディアード / 発話行為 / ポリフォニー / ディアロジスム / 韻律 / 譬喩形象 / フランス近代抒情詩 / 抒情主体 / 脚韻 / 韻律法 / フランス詩法 / 生成論 |
研究開始時の研究の概要 |
「詩の危機」や『音楽と文芸』に窺える後期マラルメの詩学には、定型韻律に基づく高踏派の「構成の詩学」と、自由韻律に依拠する象徴派の「イメージの詩学」との間で激動するフランス詩法の「危機」が反映している。本研究は、この状況下でマラルメが構想した「内的イメージ=リズム」という概念に着目し、その観点から個々の詩篇を分析することにより、その詩法を新たな角度から照射する。分析では特に「抒情主体」という詩学概念を導入し、「内的イメージ=リズム」をこの「抒情主体」から湧出する韻律と譬喩形象の錯綜体として捉え、その視点から詩篇を考察する。本研究の結果、後期マラルメの詩法の新たな側面が解明されるものと期待される。
|
研究実績の概要 |
2023年度前半は、(1)ドマン版『ステファヌ・マラルメ詩集』(1899年)を研究対象とし、個別の詩篇における韻律構成と譬喩形象との関係をポリフォニー言語理論やディアロジスム論の見地から考察し、(2)2023年度後半では、2021年度と2022 年度に実施予定であった『エロディアード』および『半獣神』草稿群の考察結果を綜合した上で、マラルメ後期詩学の諸特徴を「抒情主体」の観点から解明する予定であった。しかし、2022年度の「エロディアードの婚姻」の考察に膨大な時間を要したため、研究計画が半年以上も遅れ、(1)の考察はいまだ完了しておらず、したがって、(2)の考察もいまだ着手できていない。さらに、マラルメ詩篇における詩的発話行為において「抒情主体」がどのように関与しているかを理論的に考察していく過程で、「発話的審級」の概念が論者によって非常に多様であり、それぞれ独自の視点から形成されてきたことが判明した。このため、この「発話的審級」の概念をめぐって膨大な先行研究をあらたに再読し、概念間の共通点と相違点を網羅的に調査した上で、それを再構築していく必要性が発生した。この作業を通して、これまでのマラルメ研究では、「抒情的〈私〉」、「抒情主体」、「抒情的〈声〉」は、詩的テクストにおいて全く異なる水準に位置しているにもかかわらず、同一水準で扱われたり、さらに完全に混同されてきたことが明らかとなった。そして、このような3つの発話水準が混同されてきた背景には、詩の分析において、発話行為論やポリフォニー言語理論の観点からすれば、「語る主体」と「話者」と「発話行為者」は完全に異なる審級であるにもかかわらず、それらを厳密に区別せず、詩のテクストを単一の主体によって生産されるものと見なす暗黙の前提が依然として残存していることが考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年度「実施状況報告書」ですでに記しているとおり、2022年度に、『エロディアード』草稿群(とりわけ「エロディアードの婚姻」)の考察に膨大な時間を要したため、2023年度の研究が半年以上遅れてしまった。 また、2021年度と2022年度はまだコロナ禍にあり、フランスに滞在してパリ国立図書館で資料収集を実施することを断念せざるをえなかったことも、計画実行の大幅な遅れに繋がった。 さらに2023年度は、健康上の理由からフランス滞在が不可能となったこともあり、十分な資料を調査できず、最終的に本研究課題の研究期間を1年間延長することを決断した。 以上に加えて、上記「研究実績の概要」でも記したように、詩的テクスト一般における「発話的審級」の区分やそれぞれの水準の規定が論者によって異なり、膨大な先行研究をあらためて読み直し、それぞれの審級の概念規定を網羅的に調査する必要が発生したことも、研究期間延長を決断した理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、研究が遅延している以上の理由を十分に考慮した上で、まず所属機関の休暇期間を利用して、フランスに滞在し、パリ国立図書館等でマラルメ関連文献の収集を実施すると同時に、必要に応じて、ジャック・ドゥーセ文学図書館でマラルメ草稿の調査を実施する。また、上記で述べたように、マラルメ後期詩篇の発話的審級における「抒情主体」の様々な関与の様態を、ポリフォニー言語理論やディアロジスム論などの見地から分析することで、後期マラルメ詩学のこれまで発見されなかった新たな側面を照射する予定である。
|