研究課題/領域番号 |
21K00431
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩塚 秀一郎 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 教授 (70333581)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 調査の文学 / ウリポ / リュト・ジルベルマン / サン=モール通り二〇九番地 / 『人生 使用法』 / 集合住宅 / ルポルタージュ / 制約 / サン=モール通り209番地 / 野生の探偵たち / ロベルト・ボラーニョ / 小説 / フランス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の主軸となるのは、19世紀後半から現代にいたる四つの主要な「集合住宅文学」の読解を通じて、ひとつの場所で暮らすことに伴う人間関係のあり方を時代背景とともに考察し、〈ともに生きる〉ことの困難と希望を明らかにすることである。エミール・ゾラ『ごった煮』(1882)、ミシェル・ビュトール『ミラノ通り』(1954)、ジョルジュ・ペレック『人生 使用法』(1978)、リュト・ジルベルマン『パリ10区サン=モール通り209番地 ある集合住宅の自伝』(2020)の四作品を、〈文学における建築〉や〈文学的装置〉の観点からではなく、人々の共生に焦点を当てて包括的に考察することを目指す。
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研究実績の概要 |
言語遊戯によって名高い作家、ジョルジュ・ペレックには、それとは対極的な志向、他動詞的な現実探求の試みにおいても知られている。そして、後者はロラン・ドゥマンズの言う「調査の文学」にも多大な影響を与えており、彼は自らの著書『調査の新時代』(2019)を「ジョルジュ・ペレックのしるしの元に置かれている」と述べるほどだ。それにもかかわらず、気がかりなのはドゥマンズの例示する「調査の文学」には、ユーモアも言語的遊戯もあまり見られず、「遊戯性」に欠けているように見えることである。そこで今年度は、ウリポ文学の精華とも言うべきペレックの『人生 使用法』(1978)と同じく、集合住宅という舞台を共有する「調査の文学」の最新の成果のひとつ、リュト・ジルベルマン著、『パリ一〇区サン=モール通り二〇九番地 ある集合住宅の自伝』(2020)を取り上げ、遊戯性がどのように現れているかを考察した。この作品は、ある集合住宅をめぐるルポルタージュという意味では「調査の文学」の一例であるが、実存的制約が用いられているわけではない。『人生 使用法』と枠組みを共有してはいるが、ウリポ的な言語遊戯を共有しているわけではない。上述のペレックの二面性がいかに現れているかを調べ、この作品が、二面性をもつペレックとどのような関係にあるのかを考察した。結論として得られたのは、「集合住宅」という枠組みに埋め込まれた遊戯性の遺伝子が、『人生 使用法』とは別様に開花し、名もなき人びとの小さな物語が複雑に絡み合うルポルタージュを産み出している、という見解である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
『サン=モール通り209番地』の翻訳を一通り終えた。今年度は内容の分析を深めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
『サン=モール通り209番地』の分析については、日本語訳に付す予定の「訳者あとがき」の執筆を通じて、知見を深め練り上げていく。
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