研究課題/領域番号 |
21K00443
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
佐野 好則 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50295458)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 西洋古典文学 / ナラトロジー / ギリシア悲劇 / ヘシオドス叙事詩 / 西洋古典学 / 古代ギリシア叙事詩 / 古代ギリシア悲劇 / ブラトーン対話篇 / 神話叙述 / ミュートス / 比較作品論 / ホメーロス叙事詩 / プラトーン対話篇 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はナラトロジーの観点を応用し、語り手や聞き手の多層性、語られる内容の時間的順序の操作や文脈の広がりによって創造される語りの重層性などに注目することにより、西洋古典の代表的な作品において内容を効果的に伝えるために語りの形式の上でいかに巧妙な工夫が施されているかを、他の作品との比較の視点も導入しつつ、実証的に明らかにする。本研究の主たる研究対象であるホメーロス叙事詩の登場人物が語る物語、プラトーン対話篇におけるミュートス、ギリシア悲劇における叙事詩の神話叙述の翻案に関して、それぞれの箇所における語りの形式上の特徴を明らかにすることにより、作品論研究に貢献することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の第2年次にあたる2022年度において研究代表者佐野好則は、本研究の3つの重点領域のうちの一つであるギリシア悲劇における神話叙述研究の領域では『縛られたプロメテウス』における神話叙述の検討を進めた。その研究成果として、2022年9月15日に開催されたオンライン国際学会 Peradotto Session III: Greek Tragedy Symposiumにて "Prometheus’ Prophecy on the Future Itinerary of Io in Prometheus Bound" と題する口頭発表を英語で行い、口頭発表に続く質疑応答及びその後の電子メールによる意見交換において、学会主催者であるニューヨーク州立大学バッファロー校のRoger Woddard教授ら海外のギリシア悲劇専門研究者らより有益な示唆を受けた。それらの示唆に基づき研究代表者は口頭発表原稿に修正を加え、海外の出版社による学術論文集への掲載のため修正原稿を作成し、2023年1月19日に編集者に送付した。2番目の重点領域である叙事詩における神話叙述の研究領域においては、ヘシオドス叙事詩におけるガイアの描写に関して、国際基督教大学において開催された国際シンポジウムPerspectives on Nature and Environmental Ethics in the Deuteronomistic Historyにおいて2022年11月4日に研究代表者は"The Views of Natural Environment in Hesiodic Epics"と題する口頭発表を英語で行った。3番目の重点領域である哲学著作における神話叙述の研究領域においてはプラトン『ゴルギアス』、『国家』、『パイドン』のミュートスを比較検討する作業を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の3つの重点領域のうち、ギリシア悲劇の神話叙述におけるナラトロジーの観点を応用した作品論研究の研究領域においては、『縛られたプロメテウス』の神話叙述に関する研究をオンライン国際学会において口頭発表することができた。また、本研究の計画において予定されていたオックスフォード大学への研究旅行は新型コロナウイルス感染拡大などの影響によって変更となったものの、オンライン国際学会の質疑応答及びその後の電子メールによる意見交換により、海外の専門研究者からの示唆を十分に受けることができた。また『縛られたプロメテウス』の神話叙述研究の研究成果を海外の出版社からの論文集に掲載するための原稿を完成し編集者に送付することができた。また2番目の重点領域である叙事詩の神話叙述の研究分野においては、ヘシオドス叙事詩におけるガイアの描写に関する研究を国際シンポジウムにおいて英語で口頭発表することができた。また第3の重点研究領域である哲学テキストにおける神話叙述の研究領域においては、プラトン『ゴルギアス』、『国家』、『パイドン』におけるミュートスの比較作業を進めることができた。さらには本研究成果の副産物として沓掛良彦『オルフェウス幻想』の書評を出版することができた。以上のことから本研究はおおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の3つの重点領域のうちの第1のギリシア悲劇における神話叙述の研究領域については、その最終成果としての海外の出版社による研究論文集への出版のための原稿が完成したため、今後はその出版に向けてさらに作業を進める。第2の重点領域であるホメロス叙事詩における神話叙述に関しては、ヘシオドス叙事詩におけるガイアの描写に関する2022年度の研究発表の内容を精査し、2023年度に同じく国際基督教大学において開催される予定の国際シンポジウムにおいて、より完成度の高い研究発表を英語で行う方針である。第3の研究重点領域である哲学テキストの神話叙述研究に関しては、プラトンの『ゴルギアス』、『国家』、『パイドン』のミュートス部分の比較検討作業をさらに進めるとともに、エンペドクレスの哲学詩『自然について』及び『カタルモイ』が新たな研究対象として選定された。これらの研究課題を遂行するために必要となる研究文献の文献調査を進めることとする。
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