研究課題/領域番号 |
21K00451
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 道男 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (20187769)
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研究分担者 |
佐藤 雪野 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (40226014)
藤田 恭子 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (80241561)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 国民詩人 / シラー祭 / ブコヴィナのユダヤ系新聞 / チェコの新聞とロマ / ドイツ系ディアスポラ集団の民族意識 / ディアスポラの新聞 / ディアスポラ / トランシルヴァニア / ブコヴィナ / チェコ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、トランシルヴァニアに中世に入植し、19世紀後半まで自治特権を有して独自のドイツ世界を形成していたズィーべンビュルガー・ザクセン人、ウクライナとルーマニアにまたがる旧墺領、ユダヤ人の桃源郷とされるブコヴィナのユダヤ人、チェコ居留のロマという3つのディアスポラが持つ自らの民族集団むけの主要新聞(興味深いことに、ディアスポラでは少数の主要新聞が世論をリードする。これ自体が研究の対象として意味がある)を1紙ないし2紙取り上げ、それらが民族集団の民族意識を形成・構築していたとすれば(我々はすでにこれを確実視している)、「国民詩人」をいかに生成し、報道の場でいかにそれがなされたかを追求する。
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研究実績の概要 |
19世紀から20世紀中葉に至る中欧の様々な民族主義の勃興と成熟の状況の中で、民族の一員となることを期したディアスポラ集団が持つ新聞が、「民族」概念の形成機関であったことが注目され始めている。新聞は民族の紐帯となる象徴的な文学者とその文学を「国民詩人」・「国民文学」として大衆に理解されやすい形で抜粋して示し、様々な民族祭等の行事をからめて主導的に予告・報道してディアスポラ集団を誘導してきた。 単に民族を謳い上げた文学が存在するだけではなく、それを大衆に媒介し、民族そのものの像を植え付けるための最も有効な装置として、新聞・雑誌という活字媒体が大きく機能していた状況が次第に明らかになりつつある。例えば国民詩人を謳いながら新聞が伝える民族祭において、新聞が属する祝う側は、たとえば詩や散文の訴求力を利用しつつ、実はその背後にいて新聞を武器とする存在―例えばドイツ語圏の場合、国家ではなく、連帯した「教養市民層」―自身とともに、彼らが作品そのものの扱いを操作することで成立した民族観念を祝ったのであり、それがそのままディアスポラ集団に共有されるという現象の理解が、我々の研究の結果進んできた。各研究者が対象とするディアスポラの新聞を実際に掘り起こし、上記のようなそのディアスポラ・アイデンティティとその民族観の形成機を、文学における受容理論等を援用しながら詳細に明らかにするのが本研究であり、当該地域における実地調査・研究を骨子としているが、COVID19関係の事情により、研究の遂行のための現地調査が遅れていた。佐藤は1度現地調査ができたが、鈴木と藤田は、2021年度終了予定ながら1年延長したプロジェクトを優先せざるを得ず、本プロジェクトの調査は本年度にずれ込まざるを得ない。ただし我々はすでに2本の研究を雑誌発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記のように、我々の研究には現地における調査と、現地の研究者の協力が不可欠である。ネットにる現地の新聞の調査には、おのずと大きな限界がある。 渡航制限が緩んだものの、渡航のための航空運賃がまだ落ち着かず、経費に対する圧迫が大きく、調査は必然的に遅れざるを得なかった。 ただし、今夏、直ちに遅れを回復するべく調査を再開する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
ヨーロッパへの入国と現地調査が安全に行いうる状況が成立しつつあるので、まだ調査に赴けていない2分担者は今夏直ちに現地に向かい、調査を行うことができるよう、現地との調整を進めている。新聞は資料としての分量が極めて大きく、古いものに対する閲覧制限が大きく、またネット上への公開も遅れている。従って、現地調査、現地の研究者の協力が我々の研究に占める割合は依然として極めて大きい。
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