研究課題/領域番号 |
21K00452
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
佐々木 あや乃 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (60272613)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ペルシア古典文学 / ルーミー(モウラヴィ―、モウラーナー) / 精神的マスナヴィー / データベース / イスラーム神秘主義 / ルーミー(モウラヴィー) / マスナヴィー / ペルシア語修辞学 / イラン / ルーミー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、ルーミーの『精神的マスナヴィー』のテクストを通して、ルーミーの生み出す詩的言語やルーミーが採用した数多の逸話、自己探求の助けとなり得る言説に関する思想を丹念に洗い出すことにより、深淵で広大なペルシア修辞学を用いてルーミーが伝えんとしたイスラーム神秘主義思想やイスラーム哲学、ひいては彼の目指した人間の生き方に対する理解を深めることを目的とする。 国内外のルーミー研究を踏まえ、当時の社会にイスラーム神秘主義を浸透させるためにルーミーが用いた数多の逸話に焦点を当て、現代イランや欧米で人々の共感を喚ぶ部分や東洋思想との共通点や相違点を見出すことにより、その普遍的価値の検証に取り組む。
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研究実績の概要 |
研究代表者は、ペルシア語神秘主義詩の最高峰、13世紀の詩人ジャラールッディーン・ムハンマド・ルーミー(Jalal al-Din Muhammad Balkhi Rumi, d.1273, 以下慣例に従いルーミー)の一大叙事詩『精神的マスナヴィー』の逸話部分に関し、素手に終わらせてある下役の遂行を、昨年度に引き続き丹念に進めると同時に、出版に向けて解説部分の執筆を進めた。 『精神的マスナヴィー』のデータベースに関しては、従来通りコニヤ版を底本とし、前年度の続きとなる第3巻の2836ベイト以降の入力と校閲を進めた。その結果、コニヤ版全113ページのうち100ページまでの入力・校閲作業を終え、3197ベイトまでがデータベース化された。 2023年度については、当初、年度末までに第3巻までの校閲と入力作業を終える予定であったが、研究代表者の体調不良により、データベース作成に関しては、はかばかしい進捗が見られなかった。よって、年度末に延長申請をおこない、2024年度末までに第4巻までの入力・校閲作業を終える計画へと変更した。エンジニア班は既に第4巻の入力準備作業を完了したので、2024年度初めから3巻の残りの部分を研究代表者と入力班が校閲・入力し、3巻終了後に速やかに4巻の入力・校閲作業に入ることができるよう、準備を整えた。 研究代表者は、13世紀の代表的ペルシア詩人であるサアディ―と本科研で研究対象としているルーミーの影響を多大に受けた、14世紀の詩聖ハ―フェズに関する紀要論文1本を執筆、発表するに至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者のコロナ後遺症と難病罹患により、逸話部分の遂行を予定通りに進めることは叶わず、解説部分の執筆もかなりの進捗はあったものの完成には至らなかった。年に3度の入院・治療を試みたが、比較的新しい難病のため治療法が確立しておらず、手探りで体調と相談しながらの研究とせざるをえず、病気と共に歩む生活を確立しようと研究代表者自身日々模索しているところである。研究代表者は就業制限が続いており、海外出張もままならない状況ではあるが、来年度は意見交換や新たな知見を得るため、海外から研究者を招へいできるよう、目下準備中である。 また、データベース入力に携わる大学院生には、一定以上の高度なペルシア語能力が要求されるため、適任者が見つからず増員は叶わなかった。高度なペルシア語運用能力をもつ博士課程の学生への負担を配慮せざるをえないという事情もあり、データベース入力が予定より少し遅れ気味にならざるをえない。しかし、高度なペルシア語運用能力を有する国内の日本人学生は稀少かつ貴重な存在であり、一朝一夕に適任者を見つけることはできない。この問題はペルシア古典文学研究を日本国内で進めるにあたっての大きな課題の1つといえる。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の体調は、最後の手術後比較的症状が落ち着いているため、9月までに逸話部分の翻訳の遂行と解説の完成に向けて作業を進めることが可能である。 データベースの作業については、第3巻の残り十数ページの校閲と入力は、6月ごろまでに確実に終わるため、全89ページと比較的分量が少ない第4巻に着手することができる。従来通り2人1組での入力作業のチェック体制により、作業の推進が大いに期待される。 本研究の1年間の延長も承認されたうえ、作業継続のための新しい科学研究費助成事業の申請も2024年度から3年の期間で承認された。次の科研3年で4~6巻の入力を終えられなければ、世界のルーミー研究に資するデータベースの提供は叶わない。そこで、2024年度には海外からの研究者招へいも視野に入れている。研究代表者は、海外の研究協力者とテキストを読み進めたり、意見交換をおこなうことにより、チーム全体の『精神的マスナヴィー』と向き合う姿勢に好影響を与えられると考えている。ルーミー研究発展のため、本データベースが必須の工具であることをチーム全体が改めて認識し、随時世界で活用されるデータベースを完成させ、そのデータベースを長きにわたって保持できる環境をつくることの重要性を再認識することを目標として掲げている。
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