研究課題/領域番号 |
21K00455
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
橋本 順光 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 教授 (80334613)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | アウグスティヌス / ピーター・パーレー / 鎖国 / 朱印船 / 娘子軍・からゆきさん / 鈴木秀次 / 和辻哲郎 / 竹越与三郎 / ジョン・デイヴィス / G・A・バラード / ジェイムズ・マードック / 倭寇 / 西洋紀聞 / ウィリアム・ダンピア / 南洋一郎 / アサガオ / トマス・キャンベル / エドゥアール・ドゥタイユ / 露営の夢 / 小早川秋聲 / ウィリアム・ロビンソン / ジャポニスム / オリエンタリズム / 黄禍論 / 大阪商船 / 日本郵船 / 海洋文学 |
研究開始時の研究の概要 |
開国以来、日本では海洋文化が振興され、特に1890年代の海軍拡大以降、南進論と共に官民一体で海国日本が強調された。その主張は、江戸時代に海洋文学が欠落したことを嘆き、英国をモデルとする点で共通している。倭寇を、17世紀英国の私掠船よろしく、通商拡大を支えた先駆者として再評価が始まるのも20世紀初頭のことであり、その一つの結実がスティーブンソンの『宝島』を村上水軍に置きかえた高垣眸の『龍神丸』(1925)である。こうした再評価は、倭寇に注目して日本は元来海洋帝国であったことを強調する英国での日本脅威論、なかでも元海軍中将バラードの『日本政治史における海の影響』(1921)と軌を一にしている。
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研究実績の概要 |
最終年度の成果として、4本の論文を公刊し、7本の口頭発表を行い、関連する3つの主題について以下のことを明らかにできた。なお論文のうち1本は査読を経てBrill刊行の論文集に収録され、口頭発表は国外の3機関と連携して1本を英語で行ったほか、複数の講演について活字化が予定されている。 第1に明治日本における倭寇再評価をもたらした英国モデルの解明がある。アウグスティヌスに由来するアレクサンドロス大王に反駁した海賊の逸話が、ピーター・パーレーの『万国史』や『パーシー逸話集』によって明治期に流布したことが判明した。テロリズムと帝国主義は見分けられないのではないかと問いかけるこの逸話が、倭寇を先遣隊や先駆的な商人として再評価する際に援用された事を指摘できた。倭寇をノルマンなどの海賊に比定し、徳川の鎖国によって帝国の建設が途絶したという歴史観は、竹越与三郎から鈴木秀次、さらには和辻哲郎にまで継承されたことも明らかとなった。 第2に、倭寇の顕彰がいわゆる「娘子軍」ないし「からゆき」の後景化と連動していた可能性の指摘がある。1920年代後半からの黒板勝美や岩生成一による日本町の調査と顕彰は、女性の方が多く居住する同時期の南洋日本社会にあって、「南進」の先駆者と推進の主体は男性であることを印象づけることとなった。それが彼らの意図であったかどうかはともかく、南洋を舞台にした一群の小説を見ると、その傾向が明らかに読み取れることを指摘した。 第3に、このような振興と無縁なところで、海を越えて文化を切り結んだ一連の在日外国人の事績を発掘した。稲・ブリンクリーに関しては遺族から娘がいたことについて新資料の提供を受け、グルチャラン・シンについてはドキュメンタリー映画The Lotus and the Swan(2023)の制作に協力し、ポール・ジャクレーについては官憲による監視記録を発掘した。
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