• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

ウルドゥー文学に見られる郷愁とムスリムの宗教的アイデンティティ形成に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K00456
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分02050:文学一般関連
研究機関大阪大学

研究代表者

山根 聡  大阪大学, 大学院人文学研究科(外国学専攻、日本学専攻), 教授 (80283836)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
キーワード南アジア / イスラーム / 郷愁 / アイデンティティ / ウルドゥー文学 / イスラーム文化 / ムスリム・アイデンティティ / ムスリム
研究開始時の研究の概要

本研究は、19世紀以降の南アジアにおいて、ムスリムが、ムガル朝の栄光など一部のムスリムによって発展した文化を「インド・イスラーム文化」としてムスリム全体の過去であるかのように「錯覚」し、いかに郷愁を込めた想いで共有したことを検討する。同時に、こうした文化が非ムスリムであるヒンドゥーらによっても醸成されたにもかかわらず、ムスリムのみの文化であるかのように語られる動きを検討することで、ムスリムとしてのアイデンティティの確立の流れを、ウルドゥー文学作品を通して明らかにする。

研究実績の概要

本研究計画の最終年度となる2023年度は、これまでの研究の成果を公開することに集中した。日本南アジア学会第35回全国大会では「教養と娯楽―雑誌『女性の声 Tahdhiib-e Niswaan』(デリー)の 内容から見えるムスリム女性のたしなみ」と題する研究発表を行い、20世紀前半の北インドにおける女性向けウルドゥー語雑誌のなかで、ムスリムのアイデンティティ形成がいかに醸成されているかを指摘した。その中では、イスラームに関する知識が重点的にわかりやすく解説され、読み物として掲載されていると同時に、近代的な生活様式を取り入れつつ、「聡明で信仰心のある女性」としての生き方が理想像として提示されていた。ただし、後続する時代の雑誌のような調理に関するコーナーはなく、ハラールの食事を調理することが自明となっている様子がうかがえた。最近の雑誌での調理コーナーも、西洋の料理等も含めた調理法が掲載されつつも、イスラーム的な要素は欠かせないものとなっており、ムスリムであるという意識を常に考えさせるものとなっている。また、2023年度イスラーム信頼学/地域研究コンソーシアム一般公開シンポジウムにおいては、「南アジア・ムスリムの食がつなぎ、はぐくむもの」と題して基調講演を行った。そこでは、南アジアのムスリムにとっても食が宗教的アイデンティティを自覚するうえで最も身近な存在であることを指摘したうえで、19世紀から20世紀にかけての文学作品や記録文学を通して、ムスリムが過去のイスラーム政権下での栄華をいかに懐かしみ、共通の過去を再現することで宗教的アイデンティティを共有していったかを指摘した。一昨年に学会誌(査読付き)に英語で本研究の成果を発表したことにより、研究プロジェクトは成果を挙げて区切りをつけることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

すでに本研究に関する論文を査読付きの学会誌に英語で発表し、日本南アジア学会や地域研究コンソーシアムでの研究発表や講演による研究成果報告も行ったことで、成果を十分に出すことができた。

今後の研究の推進方策

今後は、南アジアのムスリム社会におけるアイデンティティの形成を、特に女性雑誌での記述に着目して検討していきたい。ムスリム女性をめぐる問題は、パキスタンにおけるマラーラ・ユースフザイ襲撃事件のように、女性の地位向上をめぐる障壁があると指摘されているが、その実態や、女性の自立を目指す動態がいかなるものであるかを、女性雑誌を中心に検討していきたい。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (27件)

すべて 2024 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 図書 (8件)

  • [雑誌論文] 2023年のパキスタン―選挙をめぐる社会の混乱2024

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 雑誌名

      紀要 国際情勢

      巻: 94

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] On the Idea of Symbiosis in the Poetry of Bulleh Shah, an 18th Century Punjabi Sufi Poet2023

    • 著者名/発表者名
      So YAMANE
    • 雑誌名

      Orient

      巻: 58

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書 2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] パキスタンとアフガニスタンの40年2023

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 雑誌名

      2022咲耶会月例講演集

      巻: 27 ページ: 1-27

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 2022年パキスタンにおける政権交代と国民の分断2023

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 雑誌名

      紀要 国際情勢

      巻: 93 ページ: 143-154

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 地域研究から地域間研究、外国学研究へ2023

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 雑誌名

      ExOriente

      巻: 27 ページ: 1-27

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] ウルドゥー語劇教材「アナールカリー」2022

    • 著者名/発表者名
      山根聡、Marghoob Hussain Tahir
    • 雑誌名

      外国語教育のフロンティア

      巻: 5 ページ: 217-245

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 2021年のパキスタンにおける対アフガニスタン外交の変化と中国の支援2022

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 雑誌名

      国際情勢

      巻: 91 ページ: 155-165

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Muslim Writers and Food in North India, 1850-1920: Nostalgia and Uneasiness2021

    • 著者名/発表者名
      So YAMANE
    • 雑誌名

      International Journal of South Asian Studies

      巻: 11 ページ: 18-32

    • NAID

      130008121912

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 居住空間「ハヴェーリー」について2023

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 学会等名
      環インド洋地域研究 特別研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 教養と娯楽―雑誌『女性の声 Aawaaz-e Niswaan』(デリー)の 内容から見えるムスリム女性のたしなみ2023

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 学会等名
      日本南アジア学会第35回全国大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 南アジア・ムスリムの食がつなぎ、育むもの2023

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 学会等名
      2023年度イスラーム信頼学/地域研究コンソーシアム一般公開シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 19世紀後半のウルドゥー語資料に見る文学空間と宗教-牝牛保護運動のマスナヴィー2023

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 学会等名
      イスラーム穏健派研究会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ヒンドゥーとムスリムの対立と言語-19世紀末ラーホールの刊行物を通してみえるもの2023

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 学会等名
      環インド洋地域研究 HINOWS文学研究会「戦争と文学」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Khomeini’s Letter to Maududi: Islamist Thought Connected by Translation2022

    • 著者名/発表者名
      So YAMANE
    • 学会等名
      An Anarchist Turn? Imperial Tule and Resistance in the Long Twentieth Century
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] パキスタンの言語事情とウルドゥー文学の歴史2022

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 学会等名
      第36回「シンポジウム・パーキスターン2022 ウルドゥー語の世界」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 2022年パキスタンにおける政権交代と国民の分断2022

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 学会等名
      中東情勢研究会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] National Cricket Hero Wears White Hat- How Pakistani Politics Create a New Leader2021

    • 著者名/発表者名
      So YAMANE
    • 学会等名
      International Conference Populism, Diversity, and ‘Enemies of the People’: ‘Politics’ and Society in South Asia in the Twenty-First Century
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 18世紀パンジャーブにおける諸宗教の交差2021

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 学会等名
      RINDAS 総括シンポジウム「南アジアの思想と価値の基層的変化」
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Ijtimaa'ii Zahaanat men Urdu kaa Kirdaar(集団的知性におけるウルドゥー文学の役割)2021

    • 著者名/発表者名
      So YAMANE
    • 学会等名
      Internatiojnal Conference on the Role of Urdu
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] イスラーム文化事典2023

    • 著者名/発表者名
      八木久美子、阿部尚史、澤永文子、澤井充生、山根聡
    • 総ページ数
      714
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      9784621307663
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 近代アフガニスタンの群像―大国のはざまで模索する国家統一 アジア人物史10 民族解放の夢2023

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 総ページ数
      796
    • 出版者
      集英社
    • ISBN
      9784081571109
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] パキスタン NHKデータブック世界の放送20232023

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 総ページ数
      317
    • 出版者
      NHK文化出版
    • ISBN
      9784140072806
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 信頼のためのイスラーム思想と戦略 現代南アジアにおける政治運動の正当化  イスラームからつなぐ 1 イスラーム信頼学へのいざない2023

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 総ページ数
      282
    • 出版者
      東京大学出版会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 歴史的轉換期1905 革命的浪潮興團結的夢想2022

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 総ページ数
      415
    • 出版者
      「伊克巴勒的倫敦」(イクバールのロンドン)
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] NHK]データブック 世界の放送20222022

    • 著者名/発表者名
      山根聡
    • 総ページ数
      317
    • 出版者
      NHK放送文化研究所
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] アフガニスタン史2021

    • 著者名/発表者名
      山根聡 前田耕作
    • 総ページ数
      237
    • 出版者
      河出書房新社
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [図書] アフガニスタンを知るための70章2021

    • 著者名/発表者名
      前田耕作 山根聡(分担執筆)
    • 総ページ数
      408
    • 出版者
      明石書店
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi