研究課題/領域番号 |
21K00459
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
奥村 和美 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (80329903)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 万葉集 / 書儀 / 詠物歌 / 長歌 / 初学書 / 萬葉集 / 実用書 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、『萬葉集』の後期、特に大伴家持の長歌表現を主たる対象とする。家持の長歌が、先行表現を継承しつつ、六朝・初唐までの中国詩文、中でも初学書や通俗書或いは実用書の語彙や表現を受容していった過程を分析する。 一方、同時代の歌人である大伴坂上郎女や大伴池主らとの交流、巻16所載の長歌作品からの影響関係等、家持長歌と同時代長歌との相互交渉を、共有された上記中国詩文の知識教養をもとに検討する。 さらに、後代において、平安朝以降、萬葉長歌への関心が急速に薄れるが、その中にあって一部学識を備えた歌人達の間に見られる長歌受容の実態を漢字の訓詁の問題と関わらせつつ明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、1~Ⅲのアプローチのうち、Ⅱの「中国詩文からの表現の摂取、特に、知識人の教養となった初学書や奈良朝に流行した小説、或いは書儀・書簡などの実用書・通俗書の利用の跡を具体的に探る」のうち、「書儀・書簡などの実用書・通俗書の利用」についての検討を重点的に行った。具体的には、巻16題詞・左注の文を通して検討し、それらを「巻16全注の会」において報告(10月30日)、問題点をメンバーと共有・討議した。そこで、巻16の題詞・左注の文に、『杜家立成雑書要略』のような書儀・書簡などから得た表現が用いられていること、つまり、文学的に高度な達成をめざすわけではない、比較的、実用的な文章を作るときの上代びとの述作方法を具体的に明らかにした。これは、家持をはじめとする奈良朝官人の教養基盤を明らかにしたというだけでなく、実際の利用の跡を作品の上に端的に指摘した点で、これまでの研究を一歩推し進めたものと言える。これらの成果を、臺湾大學日本語文創新國際學術検討會(オンライン 11月5日)の基調講演(招待)で発表し、論文「『萬葉集』巻十六の文章と歌―『杜家立成雑書要略』との関連を通して―」としてまとめ『第18回若手研究者支援プログラム 報告集』を通じて公表した。さらに、同じく巻16の最終歌三首について、宴席の場における詠物歌の方法が高度に応用されていることを明らかにし、論文「巻十六「怕物歌三首」について」にまとめ、『萬葉集研究』42(塙書房)に発表した。このことは、アプローチⅡ「家持と同時代の作品、巻16の長歌作品と比較対照することによって、家持長歌の表現の特質を考察し家持長歌を相対化する視点を得る」とも関わって、家持における詠物歌の方法の受容と展開を考える上で意義があり、一定の成果を得たということができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Ⅱのアプローチ「中国詩文からの表現の摂取、特に、知識人の教養となった初学書や奈良朝に流行した小説、或いは書儀・書簡などの実用書・通俗書の利用の跡を具体的に探る」の基礎をなす巻16の検討に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
巻16についての個々の歌の検討はほぼ終わったので、その成果をさらに積極的に家持歌、特に家持長歌の研究に生かしていきたい。特に、官人達が集う宴席の場における家持の歌表現や題詞・左注と歌との関係に目を向けることも視野に入れる。
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