研究課題/領域番号 |
21K00493
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 神戸女学院大学 |
研究代表者 |
松尾 歩 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (20593578)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 語彙習得 / ダウン症 / 第一言語習得 / 名詞優位 / ダウン症児 / 形バイアス / 語彙構築 / 形状バイアス / 名詞 / 動詞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は実験的手法及び質問氏の両方からダウン症児の言語発達プロセスのとりわけ初期の語彙構築に焦点を当てて調査することである。健常児のデータと比較し、ダウン症児の言語発達を解明し、トリソミーによる知的障がいがどのようにダウン症児の言語発達に遅れを及ぼすのかを明らかにする。質問紙では健常児のデータが多く収集されている日本語マッカーサー乳幼児発達質問紙:JCDI(小椋・綿巻2004)の「語と身振り版」および「語と文法版」を使用し、実験では二十話に遅延のある子どもにも負担の少ないと考えられている選好追視法を使って、ダウン症児の語彙構築プロセスにどのようなバイアスが存在するかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の研究目的は言語発達遅滞児の語彙獲得プロセスについて明らかにし、健常児のデータと比較して言語発達遅滞児の語彙獲得の特質を解明することである。 定型発達児の語彙習得におけるプロセスを解明する実験から始め、その後26名のダウン症児の語彙習得の実験を実施した。定型発達児の語彙習得ではアメリカでのSwensen, Kelley, Fein, Naigles (2007)の結果に基づいて、日本語母語話者でも2歳までには名詞バイアスから動詞バイアスに発達を遂げる仮説を立てていたが、1ー2歳児(65名)のデータを分析後、1歳児は明らかに名詞優位であるが、2歳児は名詞と動詞が中立であることが分かった。その後、動詞優位に発展する月齢を明らかにするために、3歳児(15名)4歳児(9名)5歳児(14名)6歳児(6名)のデータを追加収集したが、6歳児でもアクション場面とオブジェクト場面の選好追視の時間の差に有意差はなかった。 実験方法を小学生にも適切であるアンケート方式に変更し小学3年生、5年生と大学生からのデータ収集した。興味深いことに新奇語をアクションだと捉えたのは小学5年生と大学生のみであった。現在、アメリカの大学生からのアンケート結果を収集中であり、英語母語話者は大人になっても名詞優位が続くが、日本語母語話者の場合、11歳前後で動詞優位に発展することを明らかにしようとしている。 また、45名のダウン症児を対象にした選好追視法の実験結果は「名詞、動詞優位」、「形バイアス」両方で最も月齢の低い定型発達児と同じバイアスを示すことが明らかになった。ダウン症児の場合は、困難極まりないリクルートの後やっとデータを入手できたとしても、そのうち40%のデータが使用不可能となった。これからの実験をもっと効率よく進めるためにこの不使用になる理由を解明する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の通り仮説と違った結果が出たため予定外の月齢の子供のデータを追加収集したため進捗状況がやや遅れているが、データ収集は無事完了している。
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今後の研究の推進方策 |
2025年3月までには全てのデータ分析を完了し、分散分析法でデータ解析をする予定である。また、執筆中の論文の「結果」のセクションを完成させ、ジャーナルに投稿予定である。また、上でも触れているが、ダウン症児対象の研究では、困難極まりないリクルートの後やっとデータを入手できたとしても、そのうち40%のデータが使用不可能となった。ダウン症児にも負担の少ない選好追視法を使用したため、児童が実験を受ける際に格別問題は生じなかったのだが、データ分析の段階で問題が生じた。定型発達児ではデータが使用不可能になる確率が僅か7.5%であったため、ダウン症児のデータが使用不可能になる問題を解決するために、視線の分析時点での難題を解決する方法についても考察を続ける予定である。
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