研究課題/領域番号 |
21K00494
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
伊藤 益代 福岡大学, 人文学部, 教授 (10289514)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 複数形態素 / 推意計算 / scalar implicature / 語用論的計算 / 演算子 / 複数解釈 / 言語習得 / 意味論 / 語用論 |
研究開始時の研究の概要 |
日本語母語話者である大人、及び日本語児を対象に、名詞句をどのように複数の意味であると解釈するのかに関わるデータを実験により収集・分析することにより、名詞句や、複数形態素を含む文の解釈過程について明らかにする。複数形態素についてのこれまでの理論研究では、複数形態素は「1を超える」であるとする意味論的分析が主流であったが、複数名詞句についての解釈研究は新しい局面を迎えており、語用論的推意により解釈が計算されるといった語用論的分析も提案されている。本研究では、文タイプによって名詞句や複数形態素がどのように解釈されるかを記述し、そのうえで意味論的説明と語用論的説明のどちらが妥当であるかを検証する。
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研究実績の概要 |
昨年から引き続き、複数形態素を含む文について日本語児がどのような解釈をするのかについては、英語児についてこれまで報告されている結果(Tieu et al. 2020ほか、また他の言語を母語とする子供についても同様の結果が報告されているRyans et al. 2018, 2020)と同様の結果が得られている。本年度は、日本語における特徴、つまり、複数形態素(たとえば、「たち」)を用いずに裸名詞句が複数名詞として用いられる点、また、複数名詞句についてその構成素に均一性が要求されているわけではない点が、日本語児による複数名詞句解釈に影響を与えているかどうかについて、再吟味を行っている。子供による複数名詞句解釈について、大人と異なる解釈につながる要因の点から、中国語や韓国語を母語とする子供に関わる研究も含めその知見を吟味している。前年学会発表した分は予稿集に掲載されている。 同時に、複数形態素を含む文の解釈に本当に推意計算自体が関わるのかを見極めるため、演算子が関わる文の解釈についての調査も行い、論文にまとめている。その過程で新たに生じた問題、つまり、法助動詞が関わる文については、推意計算が正しくできるのかどうかを見極める必要が生じたため、新たな調査を行い、結果、Free Choiceに関わる推意計算はできるものの、演算子を含む文の解釈計算に他者との語用論的比較計算がかかわる推意計算は難しいという結果が得られている。したがって、法助動詞が関わる文の解釈については、Tieu et al. 2020などの研究では論じられていなかった点について、さらなるデータを日本語や日本語児による解釈の点から提供することができる。まずは、学会発表を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数形態素を含む文について、日本語児を対象とした調査については、5歳児、6歳児については大体データを収集できているが、4歳児については、さらなる参加人数を増やす必要がある。(昨年同様、4歳児保護者からの調査承諾書が集まらないなど、の理由) 複数名詞句解釈の研究と比較対象となる、演算子を含む文についての推意計算に関わる調査が、当初の想定よりも複雑であり、文脈によるもの、否定文、法助動詞を含む文、など種類が多く、時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
複数形態素を含む文について、日本語児がどのように解釈しているかについては、得られた結果について、仮説に基づいた説明以外の分析(generics)の可能性も排除できないため、刺激の絵に別の要因を入れた予備調査も行った。具体的には、別の種類の動物も組み込むことにより、日本語児が複数形態素を含む文についての複数推意の計算ができないのか、genericsや種類についての解釈が関わってきているのかを判別するものであったが、大人と異なる解釈をするわけではなかったため、研究方法について再考をする必要がある。中国語や韓国語を母語とする研究結果について再吟味をすることにより、知見が得られる可能性もある。 演算子を含む文についての推意計算については、結果をまとめる予定である。
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