研究課題/領域番号 |
21K00499
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内堀 朝子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70366566)
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研究分担者 |
上田 由紀子 山口大学, 人文学部, 教授 (90447194)
今西 祐介 関西学院大学, 総合政策学部, 教授 (80734011)
下谷 奈津子 関西学院大学, 産業研究所, 助教 (20783731)
原 大介 豊田工業大学, 工学部, 教授 (00329822)
松岡 和美 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (30327671)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 日本手話 / 文末指さし / 話題一致 / 主語一致 / 文法的一致 / 行動RS / NMM / セット形成 (Set formation) / シークエンス形成 (Form Sequence) / 統語論 / 指さし |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,日本手話における「指さし(PT)」に注目し,PTを含む文や句の構造について分析する。PTは,身振り手振りで意志を伝える際に多く用いられる動作と一見似ているため,ジェスチャーの一種であり言語外要素であると見なす考え方もある。しかし,もし人間の言語がヒトの脳内に備わった普遍的なシステムによって生み出されるものだとすれば,身体の外に表出する手段が音声であるか,身体部位の形や動きであるかに関わらず,共通の特徴が見出されることが予測される。本研究は,音声言語でこれまで明らかにされてきた人間の言語の普遍的特徴が,特に文末や名詞句内のPTにおいてどのように表われているかを解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
令和5年度では,文領域における文末指さしの生起環境として,手話言語学においてロールシフト(またはリファレンシャルシフト,以下RS)と呼ばれる現象が生じている文に注目し,RS領域の後に出現する文末指さしについて,データ収集とその分析を行った。 これまでの本研究に基づけば,文領域に生起する文末指さしは,自然言語に見られる文法的一致現象における一致素性の形態的な具現化と仮定することができる。この仮定の下では,文末指さしが現われているのが句構造上のどの主要部にあたるかという問いに対し,RS領域の構造を手がかりとすることができると考えられる。 そこで,今年度は,日本手話における2種類のRSである「行動RS」と「引用RS」が生じている構造を調査した。まず,文末指さしは行動RS領域内にも引用RS領域内にも現われず,さらに文末指さしは基本的に主語または話題要素と一致する人称および数素性を形態的に標示するが,RS領域内に含まれる主語とは一致しないことが確かめられた。 ここで川崎(2021)によると,行動RSを形態的に標示する述語要素は動詞のみであり,後続するアスペクトやモダリティは含まないとされていたが,本研究においては,行動RSが動詞およびそれら後続要素にわたって標示される場合が許されることが確認できた。一方,行動RSは目的語を含まないため(内堀・上田2023),行動RS領域は動詞句よりも構造的に小さなサイズであると考える可能性もあったが,ここで確認した通り,行動RSの形態的標示が動詞後続要素も含み,さらに文末指さしは含まれないことから,行動RS領域は動詞句を選択するアスペクト句ないしモダリティ句まで,かつ,それらを含む述語句を選択するCP未満と仮定できる。この仮定は,その後に生じる文末指さしがC主要部に生起するという考えと矛盾せず,文末指さしの生じる統語構造への解明につながると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,令和3年度から令和5年度にかけて,コロナ禍による調査回数の減少が大きく影響したために,研究計画の内,限定詞句領域内に現われる指さしに関しては,データ収集を行うことができなかった。そこで,文領域内の文末指さしに集中して,データの調査および分析を行ってきた。その結果,令和5年度までの研究全体を見れば,限定詞句内領域の研究は遅れを取り戻せないが,文末指さしの研究における順調な進展を加味し,「やや遅れている」との認識となった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6(2024)年度は最終年度にあたるため,これまで進めることができなかった限定詞句領域内の指さしについての調査・研究は,もし可能であれば初歩的な部分に着手することにとどめ,文領域に出現する文末の指さしについて,これまでの文法的一致現象として機能範疇主要部に出現するものという統語分析をまとめられるよう,さらなるデータ調査および分析を進めていくこととする。
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