研究課題/領域番号 |
21K00505
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
飯田 真紀 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (50401427)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 広東語 / 台湾語 / 疑問文 / 正反疑問文 / 間接疑問 / 類型論 / ビン南語 / 北京語 / 極性疑問文 / 文末助詞 / 正反疑問 |
研究開始時の研究の概要 |
北京語、広東語、台湾語(ビン南語)を対象に、各方言の正反疑問文の振る舞いを個別に考察した後、それらの成果を突き合わせて方言類型論的に有意義な知見を導き出す。 考察課題は、[1]台湾語の「文末否定詞型」(P-neg)や「副詞型」(敢-P)の正反疑問文の意味・語用論的特徴の分析。[2]広東語における正反疑問文の機能拡張の分析。[3]北京語・広東語・台湾語の3方言において、正反疑問文(“P-neg-P”型もしくは“P-neg”型)だけが適切もしくは逆に不適切になる述語のタイプや文脈があるかを考察。最後に、[1]や[2]の調査と北京語に対する調査の結果とを突き合わせて、踏み込んだ類型論的考察を行う。
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研究実績の概要 |
本年度は主に台湾語の極性疑問文の研究を進めた。 台湾語の極性疑問文の1タイプである“敢VP”(“敢”は疑問副詞)については、従来、もう1つの極性疑問文タイプ“VP-neg”(negは否定詞)との使い分けを地域や年齢といった要素に着目し、記述することが多い。本研究では、先行研究で議論されることの少ない“敢VP”が間接疑問節を構成する用法に着目し分析を進めた。その理由は、漢語方言類型論の知見によれば、疑問副詞(Adv)を用いたAdv-VP型中性疑問文は間接疑問節になりにくいことが指摘されているからで、もしも“敢VP”がAdv-VP型でありながら広範囲に埋め込みを許すならば類型論において珍しいタイプをなす可能性がある。 そこで、まず、台湾語で書かれた小説・シナリオなどを電子データ入力したコーパス、および台湾語によるニュース報道やスピーチといった音声データを調べ、“敢VP”間接疑問節の実例を幅広く収集した。次に、集まった例について文中での出現位置(目的語、主題(主語)など)や主節述語の意味の違いに基づき、埋め込み度の差を分析した。結果、“敢VP”が間接疑問節として用いられる実例は思ったよりも多く、中には埋め込み度のかなり高い例も見つかり、それに応じて「問いかけ」の意味が希薄になっていることが認められた。ただし、文体の影響も考慮する必要があると見られる。実例は書き言葉に近いフォーマルな文体に集中しており、話し言葉ではあまり使用されない印象を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は新型コロナウイルス感染症の影響が大幅に収まり、年度末には香港に渡航し、フィールドワークを行うことができた。また、オンライン対話システムを活用することで中国広東省及び台湾の研究機関所属の海外研究者も参加する研究会を主催し、一昨年度に立ち上げた研究ネットワークの維持に努めた。 台湾語及び広東語の小説・シナリオのコーパス資料化も母語話者の協力を得て進められた。 ただし、全体として、一昨年度からのコロナ禍の下で生じた研究の遅れを取り戻すには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き言語データの収集に努めるとともに、以下の考察を進める。 1つ目に、台湾語の極性疑問文“敢-VP”について、今年度明らかになった間接疑問節での広範囲な出現を、意味変化や文法化の観点から捉え直すことを試み、論文にまとめる。次に、広東語において正反疑問(A-neg-A)の形をとりながら中性疑問から逸脱した意味を表すようになっている構文を取り上げ、その意味変化メカニズムを跡付ける。 これらの個別の課題の遂行とともに最終年度の研究総括を行う。
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