研究課題/領域番号 |
21K00515
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 九州大学 (2022) 松山大学 (2021) |
研究代表者 |
川澄 哲也 九州大学, 言語文化研究院, 助教 (30590252)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 漢語方言 / 言語接触 / 青海省 / 元代白話 / 句末の「有」 / モンゴル族 / 漢語 / モンゴル語 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では中国青海省西寧市大通回族土族自治県のモンゴル族集住地域及び漢・モンゴル族雑居地域の漢語方言2種を扱う。この2方言は共にモンゴル語から影響を受けて変容した漢語変種であるが、両者の形成過程には"Negotiation"と呼ばれる言語変容原理の解明に繋がる社会背景の差異が存在する。本研究を通じて当該原理の実態解明を進め、言語接触研究一般の進展に貢献する。また本研究と先行研究のデータを統合し、漢語がモンゴル語・チベット語それぞれと接触した場合に起こし得る変容の類型も構築する。これにより従来は史料不足で成立過程が不詳であった中国西北部の漢語諸変種の形成史を言語特徴から推測することが可能となる。
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研究実績の概要 |
2022年度は主に、中国青海省のモンゴル語方言の専門家である賈晞儒氏が2021年に出版した『心鏡-蒙古語青海方言』を材料とし、以下の3作業を行った。 ① 青海省のモンゴル語方言のデータ収集 ② 青海省のモンゴル族集住地域における漢語方言のデータ分析 ③ 作業①②で得られた知見の方言調査票への反映 このうち、特に②の作業過程において、先行研究では知られていなかった現象、要素が見出され、本研究課題に少なからぬ進展をもたらした。そのうち特に学術的価値が高く言及に値するのが、句末に現れる特殊な「有」の発見である。従来より、このような要素は元明期の一部白話文献に見られることが報告されており、「ある/いる」「である」を同一要素で表すモンゴル語との接触に起因して漢語動詞「有」の用法が拡大した結果の現象であると理解されている。しかしながら、この種の「有」の詳細な機能については、用例数に限りがあることや、文献毎に用法差があるなどの理由で、明確にはわかっていない。上掲書で新たに報告された漢語青海方言の句末「有」について今後実地調査を深めることにより、従来不詳であった元明期白話の句末「有」の機能の解明、或いは、昨年度までに構築してきた、モンゴル系言語と接触した漢語の変容類型の拡充、といった成果が得られることが期待できる。なお上掲書では、元明期と青海方言の「有」に同源関係を想定するという史実にそぐわない主張がなされていたため、その補正を主目的とした論文を執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も中国渡航が難しい状況であったため、計画していた実地調査を行うことができなかった。この点で本課題は遅れていると言わざるを得ない。しかしながら、本課題の研究対象と共通する、青海省のモンゴル族集住地域で話されるモンゴル語・漢語方言についての専門書が公刊されたことにより、従来準備していた言語調査票をより効果的なものに改編する作業を行うことができた。今後の実地調査に資する作業を行えた点を加味し、総合的には「やや遅れている」と判断したい。
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今後の研究の推進方策 |
中国への渡航が可能となった段階で、大通県北部のモンゴル族集住地域(宝庫郷を予定)において言語調査を行う。渡航が難しい場合は、昨年度までも断続的に行っていた、大通県の北に隣接する門源県の言語調査を、上海在住のチベット族の協力の下、オンラインにて行う。 また先行研究でしばしば主張される、元代白話と現代青海方言の同源関係について検討する研究発表を国際学会で行う予定である。
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