研究課題/領域番号 |
21K00518
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 渉 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 准教授 (90293117)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 非人称構文 / 格 / 一致 / 他動性 / 能格言語 / リンキング / アイスランド語 / 奇態格 / 情報構造 / 最適性理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,印欧諸語を含む多くの言語に見られる非人称構文を人称構文(リンキングにより特権化された項に対する述定作用を典型的機能として持つ)と相補的な機能(「反述定」)を持つ構文として統一的に定義すると共に,非人称構文の言語間・構文間の変異の体系的な分類を提示・説明することを目的とする。具体的には,本研究は非人称構文の統語的特性(行動特性,コード化特性)と情報構造の変異を,動詞の意味的項からマクロロール(一般的意味役割)を経て特権的統語的項(主語)にまで至るリンキングと情報構造の類型(例:文フォーカス,述語フォーカス)を踏まえて説明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は能格型言語における非人称構文のデータの収集と考察を行った。能格型言語における非人称構文の格配列,具体的には(人称構文であれば)絶対格標示の項を伴う自動詞文で能格標示項が生起する場合及び(人称構文であれば)「絶対格ー与格」の格配列を伴う二項動詞文で「能格ー与格」の格配列が生じる場合を考察した。 本研究で採用する役割指示文法のリンキング理論では,マクロロールのランク付け(行為者>受動者)及びそれを前提とした格付与制約の階層(最上位/最下位のマクロロール項が主格/絶対格標示を受ける>>非マクロロール項が与格標示を受ける>>受動者項/行為者が対格/能格標示を受ける)が前提としているが,非人称構文ではマクロロールのランク付けが停止されており,ランク付けに言及する主格/絶対格を与える制約が機能しないと考える。こう考えることにより,非人称構文においては主格/絶対格標示項が出現しないこと(代わりに,対格型言語では項が統語的に実現されず,能格型言語では能格標示を受けて生じる)対格型言語でも能格型言語でも動詞の一致形式が生じないことが導かれる。更に,行為者と受動者のマクロロールのランク付けの停止は特定の項を取り立てる情報構造(典型的には,述部フォーカスと対立する文フォーカス)のみならず,多項動詞文の意味的他動性の低下を引き起こす様々な要因によっても生じることが判明した。 更に,上述の提案を踏まえて,アイスランド語などのゲルマン諸語に見られる心理動詞構文の二重対格の格配列(「対格-対格」)を導くことを双方向的最適性理論に基づいて提案したのみならず,通時的に観察される一部の心理動詞の格配列の変化も説明した。ただし,残された課題として,アイスランド語の心理動詞の中には「対格-対格」ではなく,「対格-属格」の格配列を従えるものがあり,この属格標示の説明は未解決のまま残されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
対格型言語の非人称構文のみならず、能格型言語の非人称構文にも適用可能な提案を取りまとめる作業が能格型言語のデータの寡少性もあり、遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
能格型言語に加えて、対格型とも能格型とも分類しがたい言語(例:タガログ語)の非人称構文のデータも併せて考察を深め、論文の執筆を進める。
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