研究課題/領域番号 |
21K00527
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
片桐 真澄 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (80294388)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 人魚構文 / タガログ語 / 体現締め文 / mermaid construction / 体言締め文 / 述語初頭言語 / 類型論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、言語の類型論的研究において近年注目されている人魚構文について、述語初頭型言語のひとつであるフィリピンのタガログ語からその実態を明らかにし、世界の諸言語における人魚構文の普遍性と多様性を明らかにすることを目的とするものである。 人魚構文とは、例えば「[太郎は明日東京へ行く][予定だ]」のように、文の半分が動詞述語節でもう半分が名詞述語節である構文である。この構文は従来、日本語など述語末尾型言語に特有のものとされてきたが、述語初頭型言語であるタガログ語にも相当する構文の存在が明らかになった。本研究は、その詳細を明らかにし、諸言語の比較・対照により人魚構文の普遍性と多様性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、テキスト資料やこれまで収集した口述資料の整理と分析をもとに、タガログ語の人魚構文の特性に関する考察を行った。また、前年度の研究において、タガログ語の人魚構文の他言語との共通性や相違性を明らかにするために、タガログ語以外の諸言語の人魚構文の在り方をより精査する必要が生じたため、その文献調査と先行研究の整理を行い、それをもとに、日本語などタガログ語以外の言語との比較・対照など行った。これらの成果を片桐(2023)にまとめた。 この論文の中で、タガログ語の人魚構文の特徴として、動詞述語節の動詞が焦点と相により活用する定形タイプと、焦点でのみ活用し相では活用しない不定形タイプの2種類があることにあるが、動詞述語節の名詞との複合性についてはそのタイプによって差があるものの、名詞と節が複合述語化して単節化していることを示す証拠が強いことがわかった。ただ、その複合性は、日本語や朝鮮語など他の言語の人魚構文における名詞と節の複合性に比べると弱いと言うことも示された。人魚構文に異なるタイプが存在し、異なるタイプ間で複合述語化に違いがあるのは、タガログ語の特徴的な点であることがわかった。 異なるタイプにおける単節化や複合性の度合いやその相関性については、タガログ語のみならず様々な言語の人魚構文の詳細な分析と通言語的な比較・対照が必要であり、今後の課題とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた現地調査による言語資料の収集や分析が新型コロナウィルス感染拡大によりほとんどできなかったことから、昨年度より物語などのテキスト資料やこれまで収集した口述資料の分析と考察を中心に行うこととした。また研究方法をタガログ語のみの分析・考察によるものではなく、日本語や朝鮮語などをはじめとする人魚構文が存在する他の諸言語との対照対照研究によりタガログ語の人魚構文の特徴を明らかにするという方向にシフトしたことにより、当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も人魚構文が観察される他の諸言語との対照研究により、タガログ語の人魚構文の普遍性や特異性を明らかにするという方向で研究進める。昨年度は、日本語や朝鮮語などプロトタイプ的な人魚構文を持つ言語との対照を中心に考察を行ったが、今年度は、タガログ語と同じように、複数のタイプの人魚構文を持つ言語や、動詞述語節と名詞との複合述語化・単節化がなされていない言語、SOV以外の語順を持つ言語など、非プロトタイプ的な人魚構文を持つ言語も含め考察を進め、タガログ語の人魚構文の普遍性や特異性を明らかにしていく。
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